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長期保存可能なmRNA内包脂質ナノ粒子を開発~mRNA創薬への貢献に期待~(薬学研究院 助教 佐藤悠介)

2024年5月10日

北海道大学
日東電工株式会社

ポイント

●mRNAの医薬品応用に欠かせない脂質ナノ粒子を構成する、新規の環状イオン化脂質を共同開発。
●環状イオン化脂質を含むmRNA内包脂質ナノ粒子は溶液状態で長期の活性維持を達成。
●イオン化脂質の環状構造が脂質ナノ粒子の保存安定性を高めるメカニズムを解明。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の佐藤悠介助教、原島秀吉教授、日東電工株式会社核酸医薬開発本部の橋場一毅研究員らの研究グループは、mRNA内包脂質ナノ粒子の溶液状態での保存安定性を高める環状イオン化脂質の創製に成功しました。

mRNA医薬品は理論上どの分子でも創薬標的とすることが可能であり、感染症/がんワクチン・遺伝性疾患治療・再生医療への応用が期待されています。mRNA医薬品は従来の医薬品に比べて簡単に設計可能であることも魅力的であり、この特徴はCOVID-19に対するワクチンの迅速な開発に貢献しました。

mRNAは有望なモダリティですが、非常に不安定な物質であるため、安定にmRNAを標的細胞へ送達するDDS技術が必要です。また、COVID-19に対するワクチンは凍結状態での輸送や保管という厳密な温度管理が必要です。今後のmRNA医薬品の広い普及には凍結を必要とせず、溶液状態で長期に保管できる技術の開発が望まれています。

mRNAの長期保存を実現するために、研究グループは新規の環状イオン化脂質を開発しました。本脂質を含む脂質ナノ粒子は効率的なmRNA送達と高い保存安定性を示しました。また、本脂質の特徴である環状構造が脂質ナノ粒子の保存安定性を高めるメカニズムを解明しました。今回明らかになった知見は今後の脂質ナノ粒子によるmRNA医薬品開発に大きく貢献することが期待されます。

なお本研究成果は、202459日(木)公開のCommunications Biology誌に掲載されました。

論文名:Overcoming Thermostability Challenges in mRNA-Lipid Nanoparticle Systems with Piperidine-Based Ionizable Lipids(ピペリジンベースのイオン化脂質を用いたmRNA-脂質ナノ粒子システムにおける熱安定性課題の克服)
URL:https://doi.org/10.1038/s42003-024-06235-0

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本研究の概要図