2024年5月7日
ポイント
●光を用いて細胞内凝集体であるストレス顆粒に機能障害を引き起こさせることに成功。
●ストレス顆粒の機能障害により細胞死が起こることを実証。
●様々な細胞内非膜オルガネラの生理的役割解明と疾患原因凝集体の破壊療法に期待。
概要
北海道大学大学院先端生命科学研究院の北村 朗講師らの研究グループは、単量体赤色蛍光タンパク質(以下SuperNova-Red)を細胞内のストレス顆粒へ局在化させた後、光を照射することで、時空間を制御しつつ、ストレス顆粒の機能障害を引き起こすことが可能な光遺伝学法の開発に成功しました。光遺伝学とは、光でタンパク質の機能や活性を制御する技術の総称です。代表的な光遺伝学の方法では光で制御されるイオンチャネルやイオンポンプなどの活性を制御する方法が知られていますが、本成果では蛍光タンパク質に光を照射することにより、タグ付けしたタンパク質の機能を不活性化することができる発色団補助光不活化法(CALI法)をストレス顆粒に適用し、その後細胞に起こる運命を解明したものです。
細胞内には様々な凝集体の存在が知られていますが、これら区画の特徴的な機能を調べる方法はこれまで確立されていませんでした。特に、遺伝子工学の手法である遺伝子ノックアウトやノックダウンといった方法を用いると、細胞内の対象タンパク質はすべて合成されなくなることから、凝集体そのものも形成されなくなり、その機能を調べることが原理上不可能でした。
そのため、時空間を制御しつつ凝集体の機能障害を引き起こすことができる新しい手法が必要であり、本研究はその実証を行ったものです。本研究により開発した光遺伝学実験法は、細胞内の様々な機能性構造の解析に応用させることにより、非膜オルガネラ機能の全貌解明や疾患の原因となる凝集体破壊療法のためのツールとなることが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年5月3日(金)公開のACS Omega誌にオンライン掲載されました。
論文名:Stress granule dysfunction via chromophore-associated light inactivation(発色団補助光不活化法によるストレス顆粒の機能障害)
URL:https://doi.org/10.1021/acsomega.4c01469
詳細はこちら