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アマモ場の供給サービスを世界で初めて空間的に評価~持続可能な里海づくりへの貢献に期待~(北方生物圏フィールド科学センター 教授 宮下和士)

2024年5月8日

ポイント

●アマモ場の空間的・経済的な供給サービスを世界で初めて定量的に試算。
●アマモ場の生態系サービスは、沿岸域全体を立体的に評価することが重要。
●生態系サービスの新たな評価手法の提案。

概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの宮下和士教授、南 憲吏准教授、朱 妍卉特任助教、及び同大学大学院環境科学院博士後期課程3年の伊藤慶造氏らの研究グループは、北海道立総合研究機構釧路水産試験場の園木詩織研究員、東京農業大学生物産業学部の千葉 晋教授、水産研究・教育機構の白川北斗研究員、西網走漁業協同組合の川尻敏文参事らとの共同研究により、世界で初めてアマモ場の供給サービスを空間的に評価しました。

アマモ場は、世界の沿岸に広く分布する海草藻場であり、二酸化炭素の吸収や生き物への生息地の提供など、人間に多くの利益をもたらします。これを生態系サービスと呼び、その経済価値を示す研究が盛んに行われています。しかし、これまでは小スケールや2次元的な分布による試算が多く、空間的に評価した例はありませんでした。そこで研究グループは、201578月に北海道網走市の能取湖で、魚群探知機を用いたアマモ場の分布調査、能取湖の主要な漁業資源の1種であるホッカイエビの漁獲調査を実施し、アマモ場とホッカイエビの空間的な関係を解析し、生態系サービスの一つである供給サービスを定量化しました。その結果、ホッカイエビは、「切れ目」と呼ばれるアマモ場がある場所とない場所の境界付近でよく漁獲されることが明らかになりました。この関係をもとに、2015年における能取湖のホッカイエビの漁獲金額は6,026万円になると試算し、世界で初めて空間的・経済的な供給サービスを定量化しました。本研究成果から、アマモ場の生態系サービスは、沿岸域全体を立体的に評価することが重要であり、生態系サービスの新たな評価手法の提案が可能であることが分かりました。今後の持続可能な里海づくりへの貢献が期待されます。

本研究成果は2024214日(水)公開のScientific Reports 誌にオンライン掲載されました。

論文名:Spatial and economic quantification of provisioning service by eelgrass beds in Lake Notoro, Hokkaido, Japan.(日本北海道の能取湖でのアマモ場による供給サービスの空間的かつ経済的な定量化)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-024-54348-7

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能取湖の広大なアマモ場。二酸化炭素の吸収・貯留、生き物への生息地の提供、水質浄化などの機能をもち、豊かな生態系を築くことで、沿岸の地域社会に多大な貢献をしている。