2024年5月15日
北海道大学
兵庫県立大学
ポイント
●分子の形の変化などを記述する反応速度式が単純化される仕組みを解明。
●観測周期(時間解像度)と関連付けて、誤りのない射影理論を構築することに成功。
●生体高分子の機能発現など、単分子や近接する分子が重要な変化をする過程の解明に期待。
概要
北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同大学電子科学研究所の小松崎民樹教授、兵庫県立大学大学院情報科学研究科の戸田幹人客員研究員らの研究グループは、多様な異性化反応をする単分子の、反応速度式の粗視化と観測周期の関係を、時定数を維持したまま定式化することに成功し、第一原理計算と反応経路探索法で求めた異性化反応ネットワークに応用しました。
本成果は、従来の平衡分布を用いた近似理論を刷新し、あらゆる観測周期に対して理論的に保証された粗視化を提示する包括的な解析法です。将来的には、計算の大規模化や既存の近似理論と合わせることで、タンパク質等の巨大な分子における動的機能の時間階層的な理解を可能にし、複数の実験で得られた観測結果と理論・計算のスムーズな橋渡しが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年5月17日(金)公開のProceeding of National Academy Science United States of Americaに掲載される予定です。
論文名:An Encompassed Representation of Timescale Hierarchies in First-order Reaction Network(一次反応ネットワークにおける時間階層の包括的表現法)
URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2317781121
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観測周期(シャッタースピード)が長くなるにつれて、分子の形の頻繁な変化が区別できなくなり、よりすくない分子の状態のあいだを行き来するように観測される。背景の円はカメラのレンズをイメージ。