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酪農"危機"の実態を地域・個別経営レベルで解明~北海道草地型酪農地帯の実態分析から未来の酪農のあり方を展望する~(農学研究院 准教授 小林国之)

2024年5月23日

ポイント

●北海道の酪農"危機"の影響を地域・個別経営の具体的データを基に実証的に明らかにした。
●2023年は、キャッシュフローが好況期(2018年)に比較して25億円減。
●可処分所得がマイナスの経営が地域全体の17.8%で平均マイナス額1,100万円。

概要

北海道大学大学院農学研究院の小林国之准教授らの研究グループは、コロナ禍による需要の減退や資材価格高騰によって経営環境が激変し、社会問題ともなった酪農"危機"と呼ばれる2020年以降の酪農情勢の変化について、実際にどのような影響が起こっていたのかを特定の地域の個別経営のデータを基に、初めて大規模なデータにより実証的に明らかにしました。その結果、以下の点が明らかとなりました。

○地域全体から見た影響
・地域全体のキャッシュフローは、2018年には1014,000万円であったものが2022年には729,000万円まで減少したが、2023年には75億円まで少し回復した。
・飼料費、肥料費高騰対策が行われたが、実際は農業関係資材全般の価格が上昇している。

○個別経営への影響
・飼養頭数規模や一頭あたり乳量による区分からみると、全階層的にキャッシュフローが悪化している。
・可処分所得が大きくマイナスとなっている経営体も多数存在し、2023年では可処分所得がマイナスの経営は地域全体の17.8%に及び、平均金額で−1,100万円であった。

以上の研究によって、酪農経営の安定化に向けた課題の明確化、及び酪農経営の持続に必要な支援のあり方について、データに基づいた検討を行うための基礎的資料を提示することができました。今後は、酪農経営のスタイルが異なる畑地型酪農地帯においても同様の調査を行うことで、北海道における酪農危機の実態と持続的発展に向けた課題の明確化、支援のあり方を明らかにすることができます。

なお、本研究成果は、202439日(土)に開催された北海道農業経済学会第141回例会において口頭報告を行ったものです。

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