2024年6月17日
ポイント
●海洋漁業資源量と漁獲種組成の将来的変化が地球温暖化レベルに比例することを解明。
●将来の高価値漁業種の資源減少によって経済的損失が生まれる可能性を示唆。
●気候変動下での国境を越えた漁業の効率的な管理に課題をもたらす可能性を示唆。
概要
北海道大学北極域研究センターのアイリーン・アラビア特任助教らの研究グループは、東京大学及び国立極地研究所と共同で、将来の気候変動が、東部ベーリング海とチュクチ海における漁業資源の再分配を引き起こし、この地域の商業漁業の最大漁獲可能量と経済的収益に変化をもたらす可能性があることを示しました。
研究グループは、2021年から2100年までの気候変動シナリオの下で、太平洋北極圏で商業的に重要な8種の魚類とカニの資源量の変化を分析しました。その結果、将来の気候シナリオ下で予測される気候変動と海洋基礎生産変動によって、これらの種の資源量は大きく変動することが示されました。また、これらの資源量の変動は、将来の最大漁獲可能量に顕著な変化をもたらし、これら漁業資源からの潜在的な収入と利益に影響を与えると予測されました。さらに、8種すべてについて予測された最大漁獲可能量の再分布は、共通社会経済経路の下ではベーリング海の主要漁港に隣接する海域で減少し、北極圏の港に近い海域で増加することが予測されました。結果として、気候がこの地域の将来の漁船団動態に影響を与えることが示唆されました。
なお、本研究成果は、2024年6月6日(金)公開のPLOS ONE誌に掲載されました。
論文名:Future redistribution of fishery resources suggests biological and economic trade-offs according to the severity of the emission scenario(排出シナリオに応じて水産資源分布の変化は生物学的・経済的な天秤にかかる)
URL:https://doi.org/10.1371/journal.pone.0304718
詳細はこちら
(a)SSP1-2.6と(b)SSP5-8.5の気候シナリオの下で、現在(2000-2019)から将来(2021-2100)までのモデル化された資源量における、八つの商業種の資源量加重重心(COG)の軌跡。