2024年6月19日
ポイント
●附属動物病院で手洗い・アルコール消毒・環境衛生を呼びかける感染症対策プログラムを開始。
●対策前後7年間の調査で、スタッフの衛生意識の向上と薬剤耐性菌数の減少を確認。
●獣医療での感染症対策が動物の健康に留まらず、薬剤耐性菌対策に貢献することが期待。
概要
北海道大学大学院獣医学研究院の笹岡一慶助教、滝口満喜教授らの研究グループは、手洗いやアルコール消毒、環境衛生の徹底を呼びかける感染症対策プログラムを附属動物病院で開始したところ、対策前に比べて動物病院スタッフの衛生意識が向上し、薬剤耐性菌の分離菌数が減少したことを7年間の回顧的調査で明らかにしました。
院内感染を防ぐための感染症対策では、手洗いやアルコール消毒といった日常的な活動が基本となります。ヒト医療では当たり前となった感染症対策ですが、伴侶動物獣医療ではその重要性の認識が十分とは言えません。北海道大学獣医学部では獣医学教育の国際認証取得を契機として、2018年から附属動物病院全体で教育活動やインフラ整備などの感染症対策プログラムを開始しました。
本研究において、対策前後の7年間にわたり収集した意識調査アンケートと動物病院の細菌培養同定検査の結果を分析したところ、感染症対策プログラムの開始後にはスタッフの手洗い・アルコール消毒に対する衛生意識が向上し、多剤耐性菌分離菌数が減少したことが明らかとなりました。今回の研究結果は、手洗いやアルコール消毒といった基本的な感染症対策が動物病院でも効果的であることを示すものです。多剤耐性菌が減少したことから、獣医療での感染症対策が動物の健康や動物病院スタッフの安全に留まらず、薬剤耐性菌対策にも貢献することが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年5月31日(金)公開のThe Veterinary Journal誌に掲載されました。感染症対策に取り組む契機としていただくために、実際に使用した手洗いやアルコール消毒のレクチャービデオやポスターをオープンアクセス論文の補足資料として掲載しています。
論文名:Antimicrobial resistance and self-reported hand hygiene awareness before and after an infection prevention and control programme: A 7-year analysis in a small animal veterinary teaching hospital(感染症対策プログラム前後における薬剤耐性と手指衛生意識:附属動物病院における7年間の分析)
URL:https://doi.org/10.1016/j.tvjl.2024.106154
詳細はこちら