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外陰部皮膚がんの薬剤耐性の仕組みを解明~治療開発への貢献に期待~(医学研究院 客員研究員 柳 輝希、教授 氏家英之)

2024年7月12日

北海道大学
琉球大学
慶應義塾大学

ポイント

●高齢者の外陰部に好発する皮膚がんである「乳房外パジェット病」の薬剤耐性モデルの作製に成功。
●乳房外パジェット病における薬剤耐性機構を解明。
●乳房外パジェット病に対する抗がん剤開発の進展に期待。

概要

北海道大学大学院医学研究院の柳 輝希客員研究員(現 琉球大学大学院医学研究科准教授)および氏家英之教授、慶應義塾大学医学部の舩越 建准教授及び西原広史教授らの研究グループは、乳房外パジェット病の薬剤耐性モデルを樹立しました。

乳房外パジェット病は、高齢者の外陰部にできやすい皮膚がんで、高齢化が進む中で患者数が増加しています。乳房外パジェット病に対する抗がん剤は数種類開発されていますが、途中で効果が弱まってしまうこと(=薬剤耐性)があり、問題となっていました。

そこで研究グループは、乳房外パジェット病のマウスモデルを用いて、トラスツズマブという薬剤に対する薬剤耐性モデルを樹立しました。薬剤耐性を獲得する前後で腫瘍組織の遺伝子変異を比較すると、PTENという遺伝子がなくなっていることが分かりました。この遺伝子の変化は、トラスツズマブ耐性乳がんでも認められているものでした。さらにこのトラスツズマブ耐性腫瘍に対していくつかの薬剤を投与したところ、腫瘍を縮小させる有効な薬剤が複数見つかりました。

この新規薬剤耐性皮膚がんモデルは、将来の乳房外パジェット病に対する病態解明や新規治療法開発に有用であると考えられます。

なお、本研究成果は、2024710日(水)公開のBritish Journal of Cancer誌にオンライン掲載されました。

論文名:Establishment of a Trastuzumab-Resistant Extramammary Paget's Disease Model: Loss of PTEN as a Potential Mechanism(トラスツズマブ耐性乳房外パジェット病モデルの樹立:PTENの喪失が潜在的なメカニズムとして考えられる)
URL:https://doi.org/10.1038/s41416-024-02788-3

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本研究の模式図。トラスツズマブ投与を繰り返すことによって、トラスツズマブ耐性腫瘍を樹立。