2024年7月19日
ポイント
●皮膚の細胞は飢餓状態にあると自ら模様を作成。
●この模様が出現する飢餓状態では、より厚みのある皮膚を生成。
●飢餓状態での皮膚細胞の培養による、皮膚の再生医療の発展に期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院の夏賀 健准教授、眞井洋輔客員研究員らの研究グループは、皮膚の細胞が飢餓状態にあると自ら一定の模様を形成することを発見しました。
皮膚は体の最も表面に位置し、体のバリアを担う臓器です。皮膚は外側から表皮、真皮、皮下脂肪の三つの層がありますが、特に最外層の表皮が分厚くなってバリアとして働きます。表皮が分厚くなるために、表皮の細胞が「増える(増殖する)細胞」、「バリアとしての機能を持つために準備する(分化する)細胞」という二つの役割を、それぞれが協調し合って持つ必要があると考えられています。
研究グループは、皮膚の表皮細胞が自ら一定の間隔で密に集まる「模様」を作ることで、表皮が厚くなることを発見しました。この模様は細胞が飢餓状態の時に出現し、模様を作るためには表皮細胞同士がくっつく力である細胞間接着が必須であることを見出しました。また、この模様に従って表皮細胞は増殖する役割と分化する役割を持つ細胞に分かれ、その役割を決めるための分子メカニズムも見つけました。
さて、この研究で見つけた模様は、実際に皮膚の再生医療に応用できるのでしょうか?今回の研究では、飢餓状態(すなわち細胞培養液を交換せずに少しサボること)で厚みのある表皮を作ることに成功しました。皮膚を作る再生医療は重度の熱傷の患者さんや生まれつき弱い皮膚を持つ患者さんを救うために必要な技術であり、今回の研究結果が患者さんの治療法開発の一助になればと期待しています。
なお、本研究成果は2024年7月18日(木)公開のLife Science Alliance誌に掲載されました。
論文名:Patterning in stratified epithelia depends on cell-cell adhesion(重層上皮の模様は細胞間接着に依存する)
URL:https://doi.org/10.26508/lsa.202402893
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