2024年7月19日
ポイント
●冬季に北海道で降る雪の特徴の将来変化をシミュレートすることに初めて成功。
●将来北海道で降る雪が、現在の本州の雪のようになることを解明。
●雪質の将来予測や雪に関連した災害対策の進展に資する成果。
概要
北海道大学大学院理学研究院の佐藤陽祐准教授、稲津 將教授の研究グループは、気象庁気象研究所の橋本明弘室長と共同で、北海道で冬季に降る雪の特徴が将来どのように変化するかを数値シミュレーションで計算することに成功し、将来北海道で降る雪が、現在本州で降る雪のようになることを初めて明らかにしました。
これまでの数値シミュレーションによる雪の将来変化に関する研究は、雪崩の発生や雪質に深く関わるとされる降雪粒子(降ってくる雪)の特徴を扱っていないため、降雪量や積雪量の変化といった雪の総量を対象としたものがほとんどで、降雪粒子の特徴がどう変わるか?については調べられていませんでした。
研究グループは、独自に開発した、降雪粒子の成長過程を直接追跡できるモデル(成長過程追跡モデル、Process Tracking Model, PTM(図1))と、北海道大学のスーパーコンピュータ「Grand Chariot」を用いて、降雪粒子の特徴を考慮した数値シミュレーションを行い、降雪粒子の特徴が、現在と温暖化が進んだ将来とでどう変わるかを調べました。その結果、温暖化が進むと、北海道で降る雪は、現在の本州で降る雪のように変化する可能性があることを明らかにしました。このような数値シミュレーションは独自の成長過程追跡モデルと大型計算機を用いて初めて可能になった計算です。
現在の気候変動予測に基づく北海道の雪の将来予測では、降雪粒子の特徴の変化を計算できませんが、降雪粒子の特徴の変化を計算できれば、雪質の将来変化の予測や雪崩の起こりやすさの予測に貢献できることが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年7月10日(水)早期公開版のJournal of Applied Meteorology and Climatology誌に掲載されました。
論文名:Future change in the contribution of riming and depositional growth to the surface solid precipitation in Hokkaido, Japan(雲粒捕捉成長と昇華成長が北海道の降雪に与える影響の将来変化)
URL:https://doi.org/10.1175/JAMC-D-23-0226.1
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成長過程追跡モデル(PTM)によって計算された冬に降る降雪粒子に最も寄与した昇華成長と雲粒捕捉成長の分布。黄色・青色・水色は昇華成長(温度帯が異なる)、赤は雲粒捕捉成長が最も降雪粒子の成長に寄与したことを示す。(左)は現在気候、(右)は気候変動が進んだ将来気候での計算結果を示す(佐藤准教授提供)。