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低受胎牛の受胎性を改善させる治療用組成物を同定~動物用医薬品開発に向けて、仏Virbac社と特許ライセンス契約を締結~(獣医学研究院 教授 片桐成二)

2024年7月9日

ポイント

●オステオポンチンペプチド断片を用いた低受胎牛の子宮機能改善による受胎性の回復に成功。
●特許申請を行い、社会実装先として動物医薬品大手のVirbac社と特許ライセンス契約。
●国内に限らず、世界中の酪農経営における経済損失回避への貢献に期待。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院の片桐成二教授らの研究グループは、同大学大学院農学研究院の田上貴祥准教授と共同で、オステオポンチン(以下、OPN)のアミノ酸配列と相同性を持つ部分ペプチドを有効成分とする、家畜の受胎性を改善させる治療用組成物の同定に成功しました。本治療用組成物を人工授精時に腟内投与することにより、低受胎牛の多くに見られる子宮内膜での上皮成長因子(EGF)濃度異常が解消され、受胎性が回復することが示されました。

リピートブリーダー(RB)牛の受胎率向上法としては、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の投与や、腟内留置型黄体ホルモン製剤の腟内挿入などがありますが、連続投与による効果の低下、農場によって効果がないなどの課題がありました。一方、天然OPNは微生物感染の危険性があり、リコンビナントOPNは製造コストと法規制の両面で使用が困難でした。

今回同定された治療用組成物はOPNタンパク質と比べて製剤化しやすい合成ペプチドを有効成分としながらも、OPNと同等の受胎性改善効果を示しました。この度、フランスに本社を置く動物医薬品大手のVirbac社と特許ライセンス契約を結び、牛の受胎性改善治療剤として製造、販売に向けた研究開発が進められることとなりました。

なお、本研究成果の一部は、2024111日(木)にTheriogenology誌に掲載されました。

論文名:Effects of recombinant osteopontin expressed in Escherichia coli on the recovery of the endometrial epidermal growth factor profile and fertility in repeat breeder dairy cows. (大腸菌で発現させた組換え牛オステオポンチンがリピートブリーダー乳用牛の子宮内膜上皮成長因子濃度変化と生殖能力の回復に及ぼす影響)
URL:https://doi.org/10.1016/j.theriogenology.2024.01.011

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