2024年8月5日
北海道大学
東北大学
ポイント
●金ナノ構造の分子サイズの狭い隙間にタンパク質を効率良く誘導する技術を新たに開発。
●タンパク質1分子を検出可能な超高感度センシング基板であることを実証。
●微量サンプルからのバイオマーカー検出による疾患の早期発見に向けた進展に期待。
概要
北海道大学電子科学研究所(東北大学多元物質科学研究所兼務)の三友秀之准教授、居城邦治教授、同大学大学院生命科学院博士後期課程の高 天旭氏らの研究グループは、タンパク質を超高感度で検出する新技術を開発しました。
ナノメートルサイズの金属構造体を利用して、物質の化学構造に特有のシグナルであるラマン散乱を増強し、分子を同定する手法は表面増強ラマン散乱法として知られています。この方法では、金属ナノ構造体のナノサイズの狭い隙間に入り込んだ分子から発生するシグナルが最も強く、これによって微量分子の高感度検出が可能になります。しかし、従来の技術では、サイズが大きなタンパク質のような生体高分子を狭い隙間に効率的に導入することが困難でした。
本研究で新たに開発したGFT(ゲルフィルタートラップ)法は、ゲルが膨潤するときに外部から水を吸収する力を利用してタンパク質をゲルの表面に誘導し、ゲルの網目構造によってゲルの表面にタンパク質を捕捉します。この方法を三角形プレート状金ナノ粒子の集合体を載せたゲルに適用すると、粒子の間隙にタンパク質が効率良く導入され、超高感度での検出が可能になりました。このブレークスルーは、特に医療応用において、1滴以下の体液から様々な生体高分子を簡便に検出するシステムの開発に寄与し、生体センシング技術の分野における大きな進展が期待されます。
なお、本研究成果は、2024年8月2日(金)公開のACS Nano誌に掲載されました。また、今回の研究成果が高く評価され、本研究が掲載誌の表紙に選出されました。
論文名:An Ultra-sensitive Surface-Enhanced Raman Scattering Platform for Protein Detection via Active Delivery to Nanogaps as a Hotspot(ナノギャップ部位への高効率導入技術によるタンパク質の超高感度な表面増強ラマン散乱検出技術)
URL:https://doi.org/10.1021/acsnano.4c09578
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三角形プレート状金ナノ粒子が配列した構造体を温度応答性ハイドロゲルの上に載せて、ナノ構造を制御可能な新しい基板を開発した。さらに、ゲルの吸水力と3次元網目構造によりタンパク質を効率良く粒子間のナノギャップ部位に導入し、ギャップを閉じることで超高感度検出を達成した。