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メダカでは独自に進化した遺伝子が形の認識能力を制御する~視覚を用いた高度な認知能力の起源解明に期待~(薬学研究院 助教 横井佐織)

2024年8月26日

ポイント

●メダカを含めたきょく上目じょうもく類ではHmgn2遺伝子の配列が他種とはかなり異なることを発見。
●Hmgn2遺伝子を欠損させたメダカでは、形の好み(丸よりも三角形が好き)が消失。
●魚類の形認識に関与する遺伝子の初同定を通じ、視覚依存の高度な認知能力メカニズム解明を期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の横井佐織助教らの研究グループは、メダカにおいてHmgn2遺伝子が、形の認識能力に関与することを明らかにしました。魚類の形認識に影響する遺伝子の報告は今回が初めてです。

Hmgn2遺伝子は魚類から哺乳類まで、配列保存性が高い遺伝子として知られていましたが、メダカのHmgn2は他の動物種と比べるとかなり配列が異なることが分かりました。実際、細胞内の局在や、他のタンパク質との立体的な相互作用もこれまで報告されていたHmgn2とは異なり、機能的にも違いがあると考えられました。Hmgn2遺伝子が欠損したメダカでは、哺乳類の大脳にあたる終脳の一部の領域が小さくなっており、この領域はゼブラフィッシュにおいて、形の認識に関わることが報告されている領域でした。

そこで研究グループは、形の認識能力を検証する新たな行動実験を開発しました。メダカが、丸が描かれているゾーンと三角形が描かれているゾーンとで、どちらのゾーンを好むか検証したところ、正常なメダカは三角形が描かれているゾーンを好むことが分かりました。一方、Hmgn2遺伝子を壊したメダカでは、この好みが失われ、形の認識能力が異常であることが示唆されました。

この変わったHmgn2遺伝子は、脊椎動物の中でもメダカが属する棘鰭上目類のみで見つかり、棘鰭上目類は他の魚類と比較して、視覚情報を用いた詳細な対象物の認識が可能だとされています。今後の研究で、視覚を用いた高度な認知能力に必要なメカニズムが明らかになることが期待されます。

なお、本研究成果は、2024823日(金)公開のCommunications Biology誌に掲載されました。

論文名:An Evolutionarily Distinct Hmgn2 Variant Influences Shape Recognition in Medaka Fish(進化的に異なるHmgn2バリアントがメダカの形状認識に影響を与える)
URL:https://doi.org/10.1038/s42003-024-06667-8

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正常なメダカは丸よりも三角を好んだが、Hmgn2遺伝子を欠損させると好みが失われた