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3種類の睡眠薬の定量法を構築、母乳への移行性を評価~授乳期における薬物使用の安全性に関する情報蓄積への貢献~(薬学研究院 教授 小林正紀)

2024年9月2日

ポイント

●ヒト母乳及び血漿中の睡眠薬の定量法の構築に成功。
●構築した定量法を用い、睡眠薬であるスボレキサントとレンボレキサントのヒト母乳中濃度を評価。
●授乳期における薬物使用の安全性に関する情報蓄積に貢献。

概要

北海道大学薬学部の石川陽菜氏と同大学大学院薬学研究院の小林正紀教授及び古堅彩子助教(当時、現所属:慶應義塾大学薬学部)らの研究グループは、同大学病院薬剤部の西村あや子薬剤師ら、同大学病院産科の馬詰 武准教授、同大学病院精神科の石川修平助教との共同研究により、睡眠薬であるメラトニン受容体作動薬(MRA)及びオレキシン受容体拮抗薬(DORA)の母乳中及び血漿中の新規定量法を構築しました。また、構築した定量法を用いて、DORAを服用中の数人の授乳婦における母乳及び血漿中濃度を明らかにしました。

周産期には、精神的不調が生じやすいことが報告されています。中でも不眠症は妊産婦の多くが罹患しているといわれ、その治療はメンタルヘルスケアを行う上で重要です。近年、不眠症治療薬としてMRADORAの処方率が増加しています。その一方で、これら睡眠薬の授乳期におけるデータは乏しく、母乳への移行性や乳児に対する安全性に関する情報は十分ではありません。

この分野の研究の発展を目指し、本研究では、ヒト母乳・血漿中におけるMRADORAUPLC-MS/MSの定量法を構築しました。さらに、臨床研究において、日本で使用されている2種類のDORA(スボレキサントとレンボレキサント)の母乳中及び母体血漿中濃度を測定し、母乳への移行性や安全性の指標について評価しました。また、本研究は、少人数での結果ではあるものの、ヒトにおいてスボレキサントの母乳移行性を評価した初めての報告です。本研究は、授乳期における薬物使用の安全性に関する情報蓄積へ貢献することが期待されます。

なお、本研究成果は2024820日(火)にJournal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis誌にオンライン掲載されました。

論文名:Validated UPLC-MS/MS method for quantification of melatonin receptor agonists and Dual orexin receptor antagonists in human plasma and breast milk: Application to quantify suvorexant and lemborexant in clinical samples.(メラトニン受容体作動薬及びオレキシン受容体拮抗薬のバリデートされた定量法:スボレキサントとレンボレキサントの臨床検体への適用)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jpba.2024.116432

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薬剤の母乳移行性評価の概略図