2024年9月25日
北海道大学
かずさDNA研究所
ポイント
●難病「水疱性類天疱瘡」は、皮膚を形成するタンパク質を誤って攻撃する「自己抗体」が原因。
●自己抗体だけでは水疱性類天疱瘡の発症に至らず、IL-5というサイトカインが発症に関連。
●今後、水疱性類天疱瘡の治療として、IL-5を対象とした治療薬の開発や応用に期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院の葭本倫大客員研究員、村松 憲助教、氏家英之教授らと、かずさDNA研究所の長谷川嘉則グループ長の研究グループは、水疱性類天疱瘡の発症に「IL-5」というサイトカインが関与していることを発見しました。
水疱性類天疱瘡は全身に水疱を生じる指定難病の一つであり、自らの免疫(自己抗体)が皮膚を構成するタンパク質を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患です。ステロイドと呼ばれる免疫抑制剤を長期間内服する治療法が確立されていますが、本来必要な免疫まで抑制されることによる易感染性や、ステロイドによる各種の副作用(糖尿病、骨粗鬆症など)が大きな問題となっています。
本研究では動物実験により、水疱性類天疱瘡の発病過程において、自己抗体が存在するのみでは皮膚に水疱を発症せず、IL-5というサイトカインの存在が発症に重要な役割を果たすことを突き止めました。また、IL-5の働きを抑えることによって、実験動物に生じた水疱性類天疱瘡の症状を軽減させられることも証明しました。
これによって、IL-5を標的とする水疱性類天疱瘡の治療の有効性が示唆され、より副作用の少ない治療薬の開発が期待されます。
なお本研究成果は、2024年9月24日(火)公開のJournal of Investigative Dermatology誌に掲載されました。
論文名:Type XVII collagen-specific CD4+ T cells induce bullous pemphigoid by producing IL-5(17型コラーゲン特異的CD4陽性T細胞はIL-5の産生を介して水疱性類天疱瘡を誘発する)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jid.2024.08.026
詳細はこちら