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教科書が変わる!?炭素の新しい結合を実証!~弱い結合を活用した未踏材料創出に期待~(理学研究院 准教授 石垣侑祐)

2024年9月26日

北海道大学
東京大学

ポイント

●炭素原子間における一電子結合の創出に成功。
●教科書に新たなページを刻む可能性。
●結合一本で近赤外光吸収を実現。

概要

北海道大学大学院理学研究院の島尻拓哉特任助教(研究当時、現在:東京大学大学院理学系研究科特任助教)、石垣侑祐准教授、鈴木孝紀教授、北海道大学理学部4年生の川口聡貴氏の研究グループは、炭素と炭素が電子一つだけで結合できることを、実験的に初めて明らかにしました。本結果は、将来の炭素材料創製に寄与します。

炭素は有機化合物の必須元素であり、炭素原子間の共有結合は医薬品やタンパク質のような有機化合物の骨格を構築する重要な概念です。共有結合は通常、二つの原子が互いに価電子を出し合い(電子対)、共有することで形成されます。本研究では、炭素が電子一つであっても共有結合(一電子結合)を形成可能なことを、単結晶を用いたX線構造解析とラマン分光法により実験的に明らかにしました。これは、およそ100年に及ぶ化学者の挑戦に終止符を打つものであり、化学結合の理解の深化に大きく寄与します。また、電子対の形成が必要とされる従来の共有結合の常識を打ち破り、「原子間で電子を共有できれば共有結合は形成可能」として、教科書の記述が変わる可能性があります。

一電子結合は結合エネルギーが小さいため極めて弱く、それを有する化合物は容易に分解することが予想されます。本研究で開発された化合物は、結晶状態で100℃以上の高温下、あるいは溶液中で大気下でも扱えるほどに安定です。また、一電子結合はそれ一本で近赤外光を吸収可能であることを明らかにしました。これは、近赤外光を活用する有機材料の分子骨格を大幅に小型化する可能性を秘めており、新たな材料開発への応用が期待されます。

なお、本研究成果は、2024926日(木)公開のNature誌に掲載されました。

論文名:Direct evidence for a carbon-carbon one-electron σ-bond(炭素•炭素一電子σ結合の直接的証拠)
URL:https://doi.org/10.1038/s41586-024-07965-1

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本研究の概要