2024年9月30日
ポイント
●都市化で失われた低地由来の支流が豊平川に地下水供給。
●窒素などに富む地下水は人為的な栄養負荷を示唆。
●湧出地下水が河川内一次生産や河畔生物個体数に波及。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の根岸淳二郎教授らの研究グループは、北海道札幌市を流れる石狩川水系豊平川において、河床から湧出する地下水の特性と河川への影響、起源となる流域河川水、及び流域の過去景観を観測・解析しました。その結果、札幌市中心部の中流区間で見られる地下水は標高約200m程度の低地由来であり、その湧出域は過去に存在していた低地を流域とする支流の合流部と重複していました。また、硝酸態窒素などに富む水質であり、都市化などの影響を受けた地下水と考えられました。さらに、河床から湧出することで河川内の一次生産を高め、河畔の徘徊性無脊椎動物の個体数の増加へと波及していることも明らかになりました。これらにより、都市化によって表面的に失われた支流が現在も河川と河畔に影響を与えて続けていると考えられます。
本研究の成果により、より良い都市河川の環境管理に一歩近づくことが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年9月30日(月)公開のFreshwater Biology誌に掲載されました。
論文名:An urbanized phantom tributary subsidizes river-riparian communities of a mainstem gravel-bed river(幻の支流が扇状地河川本流の河川・河畔食物網を栄養補償する)
URL:https://doi.org/10.1111/fwb.14332
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60年前(A)の豊平川には現在(B:黄色い領域)表面流が無い支流がある。矢印地点で河岸や河床から現在、地下水が湧出する(CとD:冬季に温かい地下水が黄色く見え、測定用にタンクに採水中)