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サハリンウシノケグサとジョウテンウシノケグサの発見~葉断面の観察から新たに国内から見つかったウシノケグサ属2種~(総合博物館 助教 首藤光太郎)

2024年10月23日

ポイント

●イネ科ウシノケグサ属の葉断面を観察し、これまで国内で認識されていなかった2種を発見。
●サハリンウシノケグサ(新称)は、北海道と本州中部地方の高山に分布。
●ジョウテンウシノケグサ(新称)は、札幌と知床から発見され、新和名は定山渓天狗岳に由来。

概要

北海道大学総合博物館ボランティアの中川博之氏(兼ノーザン クリフ フロラ研究所)、佐藤 謙研究員、首藤光太郎助教、神奈川県立生命の星・地球博物館の田中徳久学芸員らの研究グループは、これまで国内で認識されてこなかったイネ科ウシノケグサ属Festuca2種が北海道に分布することを新たに報告しました。

中川氏と佐藤研究員は、2017年に大雪山系忠別岳で、見慣れないウシノケグサ属を発見しました。この植物の形態を観察したところ、葉の断面に七つの厚壁組織があり、F. probatovaeという植物であることが分かりました。この植物は、発表の際に国内中部地方の高山にも分布することが指摘されていたものの、その後国内の文献に全く登場してこなかった植物でした。相当する和名が存在しなかったため、タイプ標本の産地に由来する「サハリンウシノケグサ」を提案しました。

さらに、知床と北海道大学総合博物館での現地・標本調査で、これまで国内で知られてきたウシノケグサ属の他種でもサハリンウシノケグサでもない一種が新たに認識されました。この植物は葉の縁と中央に三つの厚壁組織があり、F. auriculataと同定されました。日本国内では初確認となり、産地の一つである札幌市の定山渓天狗岳に由来する新和名「ジョウテンウシノケグサ」を提案しました。

なお、本研究成果は、2024620日(木)発行のJournal of Japanese Botany(株式会社ツムラが発行する学術誌である植物研究雑誌)993号、及び20241020日(日)発行の同5号に掲載されました。

論文名:A New Record of Festuca probatovae (Poaceae), a Previously Neglected Species in the Japanese Flora(日本国内の主要文献に登場しないサハリンウシノケグサFestuca probatovae(イネ科)の新産地)
URL:https://doi.org/10.51033/jjapbot.ID0159

論文名:A New Record of Festuca auriculata (Poaceae) in Japan(ジョウテン ウシノケグサFestuca auriculata(イネ科)の日本新産を記録する)
URL:https://doi.org/10.51033/jjapbot.ID0215

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発見されたサハリンウシノケグサ(左)とジョウテンウシノケグサ(右)