2024年10月17日
北海道大学
日東電工株式会社
ポイント
●脂質ナノ粒子に含まれるイオン化脂質の足場構造が、mRNA送達の臓器選択性に関わることを発見。
●イオン化脂質に短い足場構造を導入することで、脾臓選択的なmRNA送達を達成。
●得られた脾臓標的化脂質を使用したmRNAワクチンによって抗原特異的免疫を誘導。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の佐藤悠介助教、原島秀吉教授、日東電工株式会社核酸医薬開発統括部の橋場一毅研究員らの研究グループは、脾臓選択的なmRNA送達を実現する脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle: LNP)の開発に成功しました。
COVID-19のパンデミックに対してmRNAワクチンが迅速に開発・承認された背景には、LNP技術の貢献が必要不可欠でした。LNPは非常に不安定な物質であるmRNAを分解から保護し、mRNAが体内で機能することを助けます。LNPは肝臓に移行しやすい特徴を有しており、研究グループはこれまでに、肝臓への効率的なmRNA送達を可能とするLNP開発に成功しています。
今回、研究グループは、LNPの主要な構成成分であるイオン化脂質に着⽬し、その分子構造の中でも疎⽔性分岐⾜場部分の総炭素数を減らすという単純な誘導体化戦略によって、肝臓外組織、特に脾臓へmRNAを送達できることを見出しました。それに加え、本戦略を異なるイオン化脂質に適用した場合においても、mRNAの送達先が肝臓から脾臓へ移行することを確認できました。また、得られた脾臓標的化脂質を使用したmRNAワクチンは動物モデルで抗原特異的な免疫誘導できることも示されました。本研究成果はイオン化脂質の合理的設計に基づく組織選択的なmRNA導入の実現に貢献します。
なお、本研究成果は、2024年10月7日(月)公開のNano Letters誌に掲載されました。
論文名:Impact of Lipid Tail Length on the Organ Selectivity of mRNA-Lipid Nanoparticles(イオン化脂質の足場構造がmRNA-脂質ナノ粒子の臓器選択性に与える影響)
URL:https://doi.org/10.1021/acs.nanolett.4c02566
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