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新規飼育法により評価された動物プランクトンの至適水温~地球温暖化や海洋熱波による海洋低次生態系への影響評価が可能に~(水産科学研究院 准教授 山口 篤)

2024年10月2日

ポイント

●同所的に出現する海産動物プランクトン複数種の成長速度を同時に評価できる新規飼育法を開発。
●北太平洋亜寒帯域の動物プランクトン相に優占するカイアシ類3種の成長速度と水温の関係を評価。
●カイアシ類の成長速度は2種では水温上昇に伴い増加し、1種は高水温により低下。

概要

北海道大学大学院水産科学研究院の山口 篤准教授と松野孝平助教の研究グループは、海産カイアシ類の成長速度を同時に複数種について評価する新規飼育法(改良人工コホート法)を開発しました。さらに同法を用いて、同所的に出現する北太平洋亜寒帯域に優占するカイアシ類3種の成長速度は、水温に伴う応答に差があり、種によって至適水温が異なることを明らかにしました。

近年の地球温暖化による海洋への影響は、海洋熱波という形で現れます。海洋熱波による海洋生態系の変化は、世代時間の短いプランクトンにまず表れるため、水温とプランクトンとの間にどのような関係があるのかを明らかにするのは、喫緊の研究課題です。本研究では水温が動物プランクトンの成長速度に及ぼす影響を評価する新規飼育法を開発し、北太平洋亜寒帯域における動物プランクトン相に優占するカイアシ類3種の成長速度に与える水温の影響を明らかにしました。カイアシ類2種の成長速度は水温上昇により早くなっていましたが、1種の成長速度は高水温により低下していました。このような水温に対する成長速度応答の種間差は、至適水温の種間差の反映と考えられました。

至適水温の低い1種(Neocalanus plumchrus)は、サンマが専食する動物プランクトンであるため、今後の温暖化によってその占有率が下がり、サンマの餌環境が悪化することが懸念されます。

本研究成果は、2024102日(水)公開のFrontiers in Marine Science誌にオンライン掲載されました。

論文名:The modified artificial cohort method for three dominant pelagic copepods in the northern North Pacific revealed species-specific differences in the optimum temperature(北部北太平洋に優占する外洋性カイアシ類3種を対象とした改良人工コホート法により至適水温が種により異なることが明らかに)
URL:https://doi.org/10.3389/fmars.2024.1397721

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本研究にて飼育実験(改良人工コホート法)を行った18定点。これらの定点はいずれも、動物プランクトン食性魚であるサンマが索餌回遊を行う、北太平洋亜寒帯域に位置している。