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超流動ヘリウムの懸垂液滴が示す新たな運動様式の発見~水などの通常液体では起こりえない未知の振動モード~(工学研究院 教授 野村竜司)

2024年11月20日

ポイント

●超流動ヘリウムの懸垂液滴が示す未知の運動様式を2種類発見。
●壁面を覆っている超流動ヘリウムの薄膜が下地となり、抵抗のない液滴運動が発現。
●液滴の振動というありふれた現象でも、超流動性が関わると振る舞いが一変。

概要

北海道大学大学院工学研究院の野村竜司教授らの研究グループは、平らな壁面の下にぶら下がった超流動ヘリウムの液滴(風呂の天井に生じる水滴と同様のもので、懸垂液滴と呼ばれる)を調べ、これまでに知られていない2種類の運動様式を発見しました。超流動とは液体ヘリウムを絶対零度近くまで冷却してできる粘性のない状態で、壁の表面に厚さが数十ナノメートルの薄い膜を作ることが知られています。この膜ができているお陰で、超流動ヘリウム液滴が壁面に沿って自由に動けることが発見のカギでした。水滴のような通常液体の場合、壁の小さな凸凹や汚れに引っかかって動かないことを目にすると思いますが、超流動ヘリウム液滴は何の抵抗もなく動くことができたのです。

一つ目の運動は平らな壁面に沿って超流動ヘリウムの懸垂液滴が水平運動し、平面の端に到達すると反射して往復運動するというものです。ボールが2枚の壁の間で衝突を繰り返し、往復するかのような運動です。このような水平運動は理論的にはネーターモードとして予測されていたものの、現実には存在しないとされてきましたが、超流動ヘリウムで実現したのです。

二つ目の運動は懸垂液滴の上下振動です。これまでに水などでは大きな液滴ほどゆっくり振動すると知られていたのですが、この常識に反し、液滴の大きさに依らず振動周期が一定である異常な振動をしました。詳しく見てみると、液滴の最下点が上下方向へ振動すると同時に、液滴の縁が壁面に沿って水平方向に大きく振動しており、この縁の水平運動が異常性の原因と分かりました。液滴の縁が自由に動ける超流動ヘリウムでのみ実現する新たな振動モードと言えます。

なお、本研究成果は、20241119日(火)公開のPhysical Review Letters誌(オンライン版)に掲載されました。

論文名:Anomalous Oscillation Modes of Superfluid Pendant Droplets(超流動懸垂液滴の異常振動モード)
URL:https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.133.216001

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超流動ヘリウムの懸垂液滴が示すネーターモード(左図)と異常振動モード(右図)。
液滴の運動を表すため、輪郭線の時間変化を重ね書きしてある。