2024年11月15日
ポイント
●積極的監視療法、放射線療法、手術療法を行った前立腺がん患者の治療後の後悔を定量的に評価。
●治療決定時の医師-患者の双方向の情報共有、治療後のQOLが治療後の後悔をへらすことを実証。
●患者の治療後の後悔をへらすため、治療決定時の共有意思決定の重要性を提言。
概要
北海道大学大学院保健科学研究院の佐藤三穂准教授、北海道大学病院泌尿器科の大澤崇宏講師らの研究グループは、前立腺がんと診断され手術療法、放射線療法、または積極的監視療法の治療を選択した患者さんの治療後の後悔に関する研究結果を論文報告しました。
早期の前立腺がんは、手術療法、放射線療法、積極的経過観察(監視療法)のいずれの治療を選択しても同程度の予後が示されており、長期の生存期間が得られることから、がんサバイバーの治療後の満足度を改善することは重要な課題です。そこで本研究では、前立腺がん患者さんの治療後の後悔をDecision Regert Scaleを用いて定量的に評価し、治療意思決定のプロセス、及び治療後の健康関連QOLが後悔に及ぼす影響を明らかにすることを目的としました。
治療決定時に医師から十分な説明を受け、かつ医師へ心配や疑問を伝えることが十分できたと回答した患者さんは後悔度が低いことが明らかとなりました。一方で、手術療法、放射線療法、積極的経過観察(監視療法)の治療3群で後悔度を比較したところ、差は認められませんでした。しかしながら、治療後の排尿機能、排便機能、ホルモン機能におけるQOLが不良な患者さんにおいて、後悔度が高い結果でした。興味深いことに、治療後のQOLが不良な患者さんでも、治療決定時に医師から十分な説明を受けたと回答した患者さん、医師へ心配や疑問を伝えることが十分できたと回答した患者さんは、そうでない患者さんと比較して後悔度が低いという結果でした。
本研究は、前立腺がん患者さんの治療後の後悔をへらすためには、治療決定時の共有意思決定(Shared Decision Making)及び治療後のQOLの維持が重要であることを示しました。
なお、本研究成果は、2024年10月9日(水)公開のInternational Journal of Urology誌に掲載されました。
論文名:Decision regret after curative treatment and its association with the decision-making process and quality of life for prostate cancer patients(前立腺がん患者における根治治療後の後悔と意思決定プロセス及びQOLとの関連)
URL:https://doi.org/10.1111/iju.15602
詳細はこちら