2024年12月5日
ポイント
●海苔の微量元素含有量は養殖場所における地質や人間活動を鋭敏に反映。
●産地が不明な板海苔に対しても、有明海、瀬戸内海、韓国南部などの養殖地域の特定が可能。
●他の海産物についても、希土類元素分析が確かな産地認証指標となることが期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の豊田和弘准教授の研究グループは、日本市場で販売されている75パッケージの食用板海苔を対象に、希土類元素を含む28種類の元素含有量を測定し、その濃度が海苔の養殖地域の地質学的特徴(島弧海溝系や大陸地殻)を反映していることを解明しました。
例えば、養殖海域の背後にある地質が花崗岩質の場合、トリウムやウランの含有量が高くなる傾向が確認されました。また、カドミウム(0.5 ppm)とトリウム(3.3 ppb)の濃度は、日本産と韓国産を区別する有効な指標(閾値)となります。特に、海苔中の希土類元素濃度パターンの特徴の一つであるユーロピウム(Eu)異常値が、海苔の養殖地の地質的なEu異常値を反映しており、日本国内の主要な養殖地域である有明海と瀬戸内海などや、さらに韓国からの輸入海苔においても明確な違いが認められ、産地認証の指標として利用できることが示されました。これらの指標値の有効性は、中国産海苔に関する文献データでも確認されています。本研究により、海苔以外の海産物においても希土類元素の分析が、信頼できる原産地証明手法となる可能性が期待されます。
なお、本研究成果は、2024年10月19日(土)公開のFood Chemistry誌に掲載されました。
論文名:Europium anomaly as a robust geogenic fingerprint for the geographical origin of aquatic products: A case study of nori (Neopyropia yezoensis) from the Japanese market(水産物の地理的産地を示す確実な地質指紋としてのユーロピウム異常:日本市場における海苔(スサビノリ)を対象としたケーススタディ)
URL:https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2024.141719
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2021年、⽇本では国内消費⽤に62億枚(237キロトン)の海苔が⽣産された。その58%は有明海、25%は瀬⼾内海で養殖されている。また定められた輸⼊枠に基づき、同年に約21億枚の韓国海苔が⽇本に輸⼊されたと予測されている。