2024年12月17日
ポイント
●機械学習と気象シミュレーションを用いて極端気象に対する温暖化の寄与を評価する新手法を開発。
●2021年の北海道における大雪事例が、地球温暖化によって10~20%強化されていたことを確認。
●世界各地で極端気象の要因分析が高度化し、科学的情報に基づいた対策の議論に繋がることへ期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の田村健太博士研究員(現所属:防災科学技術研究所)、佐藤友徳准教授の研究グループは、機械学習と高解像度シミュレーションを組み合わせた新しい分析手法を開発し、2021年12月に北海道で発生した大雪が、既に進行した地球温暖化によって10%から20%強まっていたことを明らかにしました。
2021年12月17~18日にかけての降雪は、札幌や小樽で24時間降雪量が50cmを超える記録的なドカ雪となりました。研究グループは、機械学習を用いて膨大な気候シミュレーションのデータベースの中から、この日と類似したケースを複数抽出し、日本周辺における過去から現在までに進行した地球温暖化による気温や水蒸気量の変化を見積もりました。見積もられた変化量に基づいて、極端気象の要因分析(イベントアトリビューション)の手法である、擬似温暖化実験と呼ばれる高解像度シミュレーションを行い、2021年の事例において、札幌など北海道各地の降雪量が地球温暖化によって強められていたことを明らかにしました。
今回の分析によって、(1)地球温暖化による大雪への影響が既に現れていること、(2)その影響の強弱は降雪をもたらす擾乱の種類や地域によって異なることが明らかとなりました。本研究で開発した手法は、世界各地で深刻化する大雪・大雨や熱波などの極端気象に対する地球温暖化の影響を見積もる際に有効であり、極端気象のメカニズムの理解、さらには地球温暖化対策の推進に繋がることが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年12月16日(月)公開のJournal of Geophysical Research -Atmospheres誌に掲載されました。
論文名:Evaluating how historical climate change affected a heavy snowfall event in northern Japan in mid-December 2021 using two pseudo global warming methods(2021年12月中旬に北日本で発生した大雪に対する歴史的な気候変動の影響を二つの擬似温暖化実験手法によって評価する)
URL:https://doi.org/10.1029/2024JD041553
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