2024年12月18日
ポイント
●分子系統解析における遺伝的異質性部位を高精度に分割する新手法を開発。
●ゲノム規模の系統解析において、進化の歴史をより正確に判定することが可能に。
●タンパク質進化の理解や工学への応用に役立つと期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の小野田晃教授の研究グループは、系統解析における遺伝的異質性部位を分割する新手法「PsiPartition」の開発に成功しました。この手法はベイズ最適化を用いて、遺伝的異質性部位を分割する数と位置の最適解を効率的に決定することができ、分子系統解析において従来法より精度の点で優れています。
分子系統解析では、生物間の遺伝子において異なる部分の進化を説明するために、様々なモデルやパラメーターを用いて系統樹を生成します。しかし、遺伝子解析技術の進歩により、膨大なゲノムデータが得られている現在では、系統樹再構築のためのモデルが複雑化しており、従来の手法では経験に依存する部分が多く、最適な系統樹を得ることが容易ではありませんでした。「PsiPartition」では、塩基配列やアミノ酸配列データの差異を記述するために、パラメーター化されたソート指標(Parameterized Soring Index、PSI)を新たに導入し、効率的かつ強力なベイズ最適化と組み合わせて、遺伝的異質性部位の分割の最適化を可能にしました。本手法によって、実際の塩基配列やアミノ酸配列データを用いたシミュレーションにおいて、分割の最適解を迅速に見つけ出し、従来法よりも顕著に高い精度で系統樹を生成することができます。本研究成果は、機械学習手法を用いて分子系統解析の精度を大幅に向上させており、本手法によって得られる知見は生物進化について新たな視点を与えうるものです。また、この手法はタンパク質の機能解析や生物工学分野の研究に広く活用されることが期待されます。
なお、本研究成果は2024年12月5日(木)公開のJournal of Molecular Evolution誌にオンライン掲載されました。
論文名:PsiPartition: Improved Site Partitioning for Genomic Data by Parameterized Sorting Indices and Bayesian Optimization(PsiPartition: ゲノムデータ解析のためにパラメーター化されたソート指標とベイズ最適化により改良された部位分割化手法)
URL:https://doi.org/10.1007/s00239-024-10215-7
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