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タンパク質ZNF518が正確な染色体分配の鍵を握る~染色体異常の原因解明への貢献に期待~(遺伝子病制御研究所 准教授 太田信哉)

2024年12月18日

北海道大学
自然科学研究機構生命創成探究センター
かずさDNA研究所

ポイント

●新しいセントロメアタンパク質の発見とその役割を解明。
●新しいペリセントロメアのヘテロクロマチン形成経路の発見。
●染色体数の異常の原因解明や癌や染色体異常症の研究の進展に期待。

概要

北海道大学遺伝子病制御研究所の太田信哉准教授及び野間健一教授、自然科学研究機構生命創成探究センターの大関淳一郎特任助教らの研究グループは、染色体安定性維持に関与する新たなメカニズムを解明しました。本研究は、癌や染色体異常症などで見られる染色体数異常の原因解明や治療標的開発への貢献が期待されます。

染色体上のセントロメアは、正確な染色体分配に不可欠であり、その周縁部(ペリセントロメア)に存在する「ヘテロクロマチン」と呼ばれる高度に凝集したクロマチン構造と密接に関係しています。しかし、このヘテロクロマチンが、どのようにペリセントロメアに形成されるかについては、多くの未解明な点が残されてきました。

研究グループは、ペリセントロメアのヘテロクロマチン形成メカニズムの一端を、ZNF518というタンパク質が担っていることを明らかにしました。ZNF518は、タンパク質の一種であるヒストンをメチル化する酵素をペリセントロメアに呼び込むことで、ヘテロクロマチンの形成を促進します。また、研究過程において、ZNF518が生殖器官(精巣や卵巣)で高発現していることを確認しました。これは、ZNF518が生殖関連細胞の形成に深く関わることを示すものです。つまり、ZNF518経路が受精後初期のセントロメア近傍ヘテロクロマチン再構築に寄与している可能性を示唆しています。

これらの成果は、染色体異常の原因解明や治療標的の開発に向けた新たな道を開くだけでなく、生殖関連細胞における遺伝情報の維持について理解を深める、重要な一歩となることが期待されます。

なお、本研究成果は、2024123日(火)公開のNucleic Acids Research誌にオンライン掲載されました。

論文名:Novel Role of Zinc-Finger Protein 518 in Heterochromatin Formation on α-Satellite DNA(αサテライトDNAのヘテロクロマチン化におけるジンクフィンガータンパク質518の新規の役割)
URL:https://doi.org/10.1093/nar/gkae1162

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セントロメアはペリセントロメアに挟まれているゲノム領域