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ありふれた材料で超高性能熱スイッチを実現~熱制御デバイス実用化に向けた開発を加速~(電子科学研究所 教授 太田裕道)

2025年1月6日

ポイント

●ガラス磨き粉として知られ、地球上に豊富に存在する酸化セリウムを使用。
●これまでの熱スイッチの熱伝導率切替幅を2倍以上も上回る超高性能。
●熱制御デバイスの実用化に向けた開発を加速。

概要

北海道大学電子科学研究所のジョン・アロン博士研究員、太田裕道教授、同大学院情報科学院修士課程の吉村充生氏らの研究グループは、ありふれた材料を使って超高性能熱スイッチを実現しました。

近年、熱制御技術の一つとして、熱流の流れやすさを電気的に切替える熱トランジスタ(=熱スイッチ)が注目されています。電子や光と同様に、熱を操ることができるようになれば、環境問題の一つである「使われずに捨てられている排熱」を、例えば熱のコントラストで情報を表示する「熱ディスプレイ」のような、新しい技術に利用できます。研究グループは、20232月に世界初の全固体熱スイッチを発表し、20247月にはより高性能な全固体熱スイッチを実現しましたが、リチウムイオン電池材料として使用され、枯渇が懸念されているコバルトやニッケルなどの金属を主成分とする材料を用いる必要がありました。本研究では、比較的資源が豊富で、ガラスの磨き粉として市販されている酸化セリウムを活性層とすることで、熱伝導率切替幅が従来比2倍以上の超高性能熱スイッチを実現しました。熱制御デバイスの実用化に向けた開発を加速する成果です。

なお、本研究成果は202512日(木)公開のScience Advances誌に掲載されました。

論文名:High-performance solid-state electrochemical thermal switches with earth-abundant cerium oxide(地球上に豊富に存在する酸化セリウムを活性層とする高性能固体電気化学熱スイッチ)
URL:https://doi.org/10.1126/sciadv.ads6137

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本研究の熱スイッチの動作イメージ。電気化学的に、高熱伝導率(12.5 W/mK)のON状態(左)から、低熱伝導率(2.2 W/mK)のOFF状態(右)に切替える。