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大雪山永久凍土地帯の地表面に刻まれた幾何学模様~高解像度画像・地形データによる詳細分布図の作成と形成過程の解明~(地球環境科学研究院 准教授 石川 守)

2025年1月22日

ポイント

●北海道大雪山の永久凍土帯に分布する構造土をドローン空撮画像により高解像度でマッピング。
●気温・地温・風向・風速の現地観測値と構造土の分布から構造土の形成過程を解明。
●地表層変動が激しい強風低温多雪環境下でも高山植物は自身の生育適地を能動的に作り出している。

概要

北海道大学大学院地球環境科学研究院の石川 守准教授らの研究グループは、無人航空機(UAV)空撮により得た高解像度の画像解析により、北海道中央部大雪山の永久凍土地帯に見られる幾何学模様(構造土)の分布や形態を示す詳細地図を作成しました。現地で観測した気象や地温データも解析することにより、これら構造土の形成要因を解明しました。

北海道中央部大雪山の永久凍土地帯では、地表面に多角形状、線状、耳たぶ状、階段状などの幾何学的な模様が見られます。これらは構造土と呼ばれ、地下氷の形成や融解に伴う礫の淘汰、活動層土壌の流動などによって形成されます。構造土の形成には、土壌中の季節性地下氷、及び冬季間を通じた毎秒10 m以上の強風による積雪の再配分などが大きく関与していますが、これらに加え不均質に分布した積雪が生み出す局所的な湿潤環境を選択して生育する高山植物も大きな役割を果たしています。植物は凍結融解による土砂移動を和らげ、自身の生育に適した環境を作り出しています。大雪山永久凍土地帯は、激しい地形変化や厳しい気象環境に抗って、植物が能動的に生育場所を拡張しようとしている場でもあるのです。

なお、本研究成果は、2025120日(月)公開のPermafrost and Periglacial Processes誌に掲載されました。

論文名:High-resolution morphometric analysis of patterned grounds in the Daisetsu Mountains, Hokkaido, northern Japan(北海道大雪山に分布する構造土の詳細形態解析)
URL:https://doi.org/10.1002/ppp.2265

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(左)淘汰型礫質構造土(条線土)。粗粒礫が直線上に配列されている。比較的急傾斜地に発達する。ほかにも階状、多角形状を示すものがある(小泉岳周辺)。(右)植被階状土-植物に覆われた前縁斜面と裸地の平坦面から成る。前縁斜面は概ね斜面方位に直交する(五色岳周辺)。