2025年1月23日
ポイント
●フジツボに対するアメフラシの防御機能に着想を得て、付着阻害ペプチドの開発に成功。
●二つあるいは三つのアミノ酸からなる低分子ペプチドが付着阻害作用を持つことを解明。
●海洋生物や海洋環境にやさしい防汚剤開発の進展に期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の梅澤大樹准教授、一般財団法人電力中央研究所の野方靖行上席研究員らの研究グループは、海洋生物であるアメフラシが防御物質として用いると考えられているペプチドのドラスタチン16から着想を得て、ドラスタチン16よりも格段に効率的に合成できるペプチドがフジツボなどに対する付着阻害作用を有することを明らかにしました。
フジツボなどの生物が船底に付着すると船の推進効率が悪化し、燃料の浪費やCO2の排出増加につながります。現在防汚塗料に使用されている防汚剤のほとんどが生物殺傷型と呼ばれ、海洋生物にとって良いものではありません。今回見出したペプチドは、フジツボに対する付着阻害作用を示しつつもほとんど毒性がありませんでした。また、市販のアミノ酸などから1~3工程でペプチドを合成できる特徴もあります。
海洋環境にやさしい防汚剤の開発は、持続可能な海洋利用にとって解決しなければならない課題の一つです。今回開発したペプチドは付着阻害性能向上など改良の余地を残しており、この課題解決に大きく寄与することが期待されます。
なお、本研究成果は、2024年12月18日(水)公開のRSC Sustainability誌に掲載されました。
論文名:Novel Settlement inhibition Oligopeptides Containing β-Amino Acids(βアミノ酸を含有する新奇付着阻害オリゴペプチド)
URL:https://doi.org/10.1039/D4SU00625A
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