2025年1月23日
ポイント
●クロゴキブリの性フェロモンの主成分がペリプラノンDであることを神経生理学的に特定。
●近縁種が使う性フェロモン成分が混ざると神経応答の減弱が起こる。
●性フェロモン処理神経の活動を抑制する化合物を探し出すことで、交尾撹乱剤の開発に期待。
概要
北海道大学電子科学研究所の堂前 愛学術研究員、岩﨑正純学術研究員、西野浩史助教は、日本の代表的な家屋害虫であるクロゴキブリの性フェロモンが脳内でどう処理されるのかを明らかにしました。
クロゴキブリやワモンゴキブリに代表されるゴキブリ属のゴキブリは、そのほとんどが家屋害虫という悪名高いグループです。このグループではメスがペリプラノン(ヒトには無臭)という特殊な化学構造を持つ性フェロモンを放出し、オスがそこに誘引されることで、交尾が成立します。
本研究ではクロゴキブリの触角(嗅感覚器)に、性フェロモンを提示し、これに強く応答する神経を探索することで、性行動を介在する神経の生理学的・形態学的特定に成功しました。
その結果、嗅覚中枢を構成する210個の糸球体(1個1個が特定の匂いに応じる)のうち、最大の糸球体から出力する神経がペリプラノンDに対して強い興奮性応答を示すこと、近接する別の糸球体は近縁種の性フェロモンに応答することが分かりました。各神経において、最も強い応答をもたらすフェロモン以外の成分が少しでも混ざると応答の減弱が起こりました。そのため、クロゴキブリの性行動を司る神経系は単一のフェロモン成分を処理するために最適化されていることが分かりました。
なお、本研究成果は、2025年1月10日(金)公開のCell and Tissue Researchに掲載されました。
論文名:Neurological confirmation of periplanone-D exploitation as a primary sex pheromone and counteractions of other components in the smoky brown cockroach Periplaneta fuliginosa(クロゴキブリにおける性フェロモン主成分の神経生理学的特定と副成分の拮抗作用)
URL:https://doi.org/10.1007/s00441-024-03935-1
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