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恐竜の走行能力の進化の解明~白亜紀は恐竜高速化の時代だった~(総合博物館 教授 小林快次)

2025年1月23日

ポイント

●恐竜出現初期から絶滅以前まで幅広い年代の獣脚類で、後肢骨格から走行能力の進化傾向を解析。
●コエルロサウルス類の一群で、走行に適した後肢比率・束状の足首骨格の収斂進化が進行。
●白亜紀中頃に高速走行型のコエルロサウルス類が同時多発的に進化したことを示唆。

概要

東京大学大学院理学系研究科の久保孝太客員共同研究員(研究当時:北海道大学大学院理学院博士後期課程)、北海道大学総合博物館の小林快次教授の研究グループは、白亜紀中頃(約120009300万年前)に、走行に適した特徴(後肢長比率・アークトメタターサル構造)の進化がコエルロサウルス類に属す獣脚類恐竜5系統で独立的に起きたことを明らかにしました。

本研究では、獣脚類恐竜104種から後肢長を解析し、走行能力に関わる後肢長比率(体サイズに対するヒザ下の相対的な長さ)が、系統間で違いがあるか、各系統でどのように変化してきたかを調べました。また、走行性の高さに関わるとされる骨同士が束ねられた足首構造・アークトメタターサルの獲得と後肢長比率との対応を調べ、このような進化が起きた時期を統計的に推定しました。

その結果、走行に適した後肢長比率への変化は、ノアサウルス類とアークトメタターサルを持つコエルロサウルス類(ティラノサウルス類、オルニトミモサウルス類、アルバレスサウルス類、オヴィラプトロサウルス類、トロオドン類)、これらの獣脚類の6系統でそれぞれ独立的に起きたことが分かりました。また、アークトメタターサルの進化も各系統で独立的に起きており、この進化がコエルロサウルス類に限定的であること、そして後肢長比率の変化と足首骨格の変化には関連性があることが分かりました。さらに、コエルロサウルス類の5系統で走行に適した特徴の進化時期が、白亜紀中頃(約120009300万年前)に収まることが明らかになりました。本研究の結果は、この期間にコエルロサウルス類の走行能力を高める選択圧があったことを示唆しています。

なお、本研究成果は、2025115日(水)、Royal Society Open Science誌にオンライン公開されました。

論文名:Cursorial ecomorphology and temporal patterns in theropod dinosaur evolution during the mid-Cretaceous(白亜紀中頃における獣脚類の進化にある走行性のエコモロフォロジーとその時間的パターン)
URL:https://doi.org/10.1098/rsos.241178

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本研究の概略図:高速走行型獣脚類の時間分布と足首骨格に生じた収斂進化