2025年1月24日
ポイント
●厚岸沿岸の潮間帯生物群集に気候変動が及ぼす影響を解明。
●生物ごとの増減傾向を調査した結果、温暖化よりも酸性化の方が影響を与えていた。
●今後の気候変動対策の方針決定の一助となることに期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の野田隆史教授、同大学大学院環境科学院博士後期課程1年の佐藤洸紀氏らの研究グループは、北海道東部の太平洋側に位置する厚岸沿岸において、温暖化や海洋酸性化といった気候変動が21年間で岩礁潮間帯の生態系にどのような影響を及ぼしていたのかを明らかにしました。
気候変動が生態系に及ぼす長期的影響は未知の部分が多く、特に同じ生態系内の複数の機能群を同時に扱った研究はほとんどありませんでした。そこで研究グループは、厚岸沿岸の岩礁潮間帯の生態系が過去21年間でどのように長期変化したか、及びその変化にどのように温暖化や海洋酸性化が影響したかを調査しました。その結果、この21年間で海藻類が継続的に増加した一方で藻食性の巻貝類が継続的に減少していたことが確認されました。さらに、海藻類の増加と藻食の巻貝類の減少には温暖化がそれぞれ影響していることが判明しました。そして、温暖化の影響を受けた種よりも酸性化の影響を受けた種の方が多く、暖かい海域を好む種は増加傾向で、冷たい海域を好む種や石灰質の殻を持つ種は減少傾向であることが判明しました。
以上の結果は、過去21年間に北海道の沿岸において、生態系の様々な構成要素が継続的に変化し続けていることを実証しただけにとどまらず、温暖化と比べて注目度の低い海洋酸性化が生態系に及ぼす影響の重要性を強調するものと考えられます。
なお、本研究成果は、2025年1月14日(火)公開のFrontiers in Marine Science誌に掲載されました。
論文名:Temporal trends of community and climate changes in the Anthropocene: 21-year dynamics of four major functional groups in a rocky intertidal habitat along the Pacific coast of Japan(人新世における群集と気候変動の時間的傾向:日本の太平洋沿岸の岩礁潮間帯生息地における四つの主要機能群の21年間の動態)
URL:https://doi.org/10.3389/fmars.2024.1477142
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