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スピンなしの強磁性機構の解明に初めて成功~磁石の新たな応用への貢献に期待~(北海道大学名誉教授 石川健三)

2025年1月28日

ポイント

●金属磁石(遍歴電子系)の相互作用ラグランジアンの導出に成功。
●スピンの関与しない金属の強磁性機構を理論的に解明。
●遍歴電子の物理解明と新たな応用の進展に期待。

概要

北海道大学の石川健三名誉教授(元大学院理学研究院教授)らの研究グループは、理論的な研究に基づいて、鉄やニッケル等の金属磁石(遍歴電子系)の新たな強磁性生成機構を発見しました。

従来のスピン(軌道角運動量)と磁場との相互作用を起源とする強磁性機構と異なり、新しい機構は、磁場下での金属の電磁場ポテンシャルのラグランジアンや作用に見つかった、チャンーサイモン項の相互作用によって引き起こされます。本研究により、この項のために新たに特異な性質や効果が生じ、物理系の磁気的性質を大きく変えてしまうことが分かりました。チャンーサイモン項は、ベクトルポテンシャルと電磁場の積に比例し、電子密度と磁場の逆数の積に比例する結合定数と、電磁場強度の二乗である通常の電磁場エネルギーより低いスケール次元を持っています。このため、電子密度と磁場の直接的な相互作用や、電流と電位変化の相互作用が起こります。このことにより、低エネルギーの現象やマクロなサイズの電子系に、従来の相互作用では発現しない効果として、強磁性が導かれました。

物質の性質を理論的に解明することによって、新たな物理効果・現象が解明され、さらなる応用への道が開かれることが期待されます。磁石の物理は、基礎と応用の両面で長い歴史を持っていますが、新たに見つかった相互作用より、今までの研究で未解明だった事柄の解明につながると予想されます。

なお、本研究成果は、2024828日(水)公開のNuclear Physics B 誌に掲載されました。

論文名:Magnetization without spin: Effective Lagrangian of itinerant electrons(スピンなしの磁化:遍歴電子系の有効ラグランジアン)
URL:https://doi.org/10.1016/j.nuclphysb.2024.116663

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強磁場領域(strong field region)と弱磁場領域(weak field region)と境界線。