2025年1月29日
ポイント
●物理的要請を満たす連続固有状態の内積と直交性の証明に成功。
●非直交連続状態の重ね合わせは、孤立状態ではないことの証明。
●2状態の直交は、短距離ポテンシャルで成立し、長距離ポテンシャルで成立しない。
概要
北海道大学の石川健三名誉教授(元大学院理学研究院教授)と同大学大学院理学院修士課程の西尾勇哉氏の研究グループは、量子力学の基本方程式である、シュレィディンガー方程式のポテンシャル中の連続固有値解に関する長年のパズルを、新たな物理的な観点に基づいて解くことに成功しました。
連続状態の扱いは数学的に複雑で、ヒルベルト空間に属している束縛状態と異なり、エルミートであるハミルトニアンの固有状態にも、困難が現れます。しかしこれは、数学とは独立に物理学の原理によって解消することができます。つまり、自然現象にかかわる物理的な要請を課すことで初めて明らかにできる事柄です。
本研究では、孤立した物理状態条件とマクロ物理量の条件を課して、連続状態の境界条件と内積、異なる状態の直交性を明らかにしました。さらに遷移確率の正しい計算法も明らかにすることができました。これらより、前方領域を含む全領域でのポテンシャル散乱の散乱確率の絶対値の計算法が解明され、生物を含む広範囲の遷移への量子力学の新たな応用の道が開かれたと言えます。
長く曖昧のままにされていた連続定常状態の内積や直交性が物理的な要請に基づいて明らかになったことは、量子力学の適用範囲を広げるものであり、さらなる応用が期待されます。
なお、本研究成果は、2024年7月31日(水)公開のAnnals of Physics誌に掲載されました。
論文名:Overlap integral of continuum stationary states(連続エネルギー状態の重なり積分)
URL:https://doi.org/10.1016/j.aop.2024.169750
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