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有毒な外来種の見過ごされてきた脅威を発見!~本州から来た有毒ヒキガエルを食べた北海道のサンショウウオは成長や変身が妨げられる~(北方生物圏フィールド科学センター 教授 岸田 治)

2025年2月3日

北海道大学
ふじのくに地球環境史ミュージアム

ポイント

●本州から北海道に侵入した有毒種のヒキガエルが在来種のエゾサンショウウオに与える影響を調査。
●エゾサンショウウオ幼生がヒキガエル幼生を一匹でも食べると成長・発生が抑制されることを発見。
●有毒な外来種が在来種の生活史に悪影響を及ぼすことを初めて実証。

概要

北海道大学大学院環境科学院修士課程の井上嘉大氏(研究当時、現 鎌倉女学院中学校高等学校教諭)、同大学北方生物圏フィールド科学センターの岡宮久規研究員(研究当時、現 ふじのくに地球環境史ミュージアム主任研究員)と岸田 治教授らの研究グループは、有毒な国内外来種のアズマヒキガエル幼生を一匹でも捕食した北海道在来種のエゾサンショウウオ幼生は、正常な成長や形態変化ができなくなることを発見しました。

有毒な外来種が在来生態系に与える影響としては、在来種が外来種を捕食することによって生じる中毒死が注目されてきました。しかし、外来種を捕食したものの中毒死から免れた在来種がその後に被る影響についてはほとんど分かっていませんでした。本研究では、アズマヒキガエル幼生がエゾサンショウウオ幼生の成長と形態変化(大きな餌を食うための大アゴ化)に与える影響について、室内実験と野外実験を用いて調べました。室内実験の結果から、エゾサンショウウオ幼生がアズマヒキガエル幼生を一匹でも捕食すると、その後の成長や形態変化が抑制されることが示されました。野外実験でも同様の結果が得られたことから、自然界でもアズマヒキガエル幼生はエゾサンショウウオ幼生の生活史に悪影響を及ぼしていることが強く示唆されました。今回の研究は、これまで知られていなかった有毒な外来種の新たな脅威を実証した重要な成果と言えます。

なお、本研究成果は、2025130日(木)公開のOecologia誌に掲載されました。

論文名:Alien toxic toads suppress individual growth and phenotypic development of native predatory salamanders(外来有毒ヒキガエルが在来捕食者のサンショウウオの個体成長と表現型の発達を抑制する)
URL:https://doi.org/10.1007/s00442-024-05658-0

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有毒な国内外来種のアズマヒキガエル幼生を捕食したエゾサンショウウオ幼生に生じる生活史への悪影響