2025年2月10日
ポイント
●水田活用の直接支払交付金制度の改正に伴う非水田での短期湛水の渡り性水鳥に対する効果を証明。
●湛水農地の水鳥の種数・個体数は湛水後の農地の2~3倍、通常の非湛水農地の6~11倍高い。
●水鳥の中でも特に保全の重要性の高いシギ・チドリ類が中継地として湛水農地を利用。
概要
北海道大学大学院環境科学院博士後期課程の清水孟彦氏と同大学大学院地球環境科学研究院の先崎理之准教授らの研究グループは、北海道石狩平野を対象に、2023年の渡り性水鳥の渡り時期(8~10月)に農地湛水が水鳥の中継地創出に与える効果を、湛水期間中・後の湛水・対照農地における野外調査によって検証しました。
背景として、2022年に水田活用の直接支払交付金制度が改正され、交付金を受給する農家には5年に一度1カ月以上の湛水が求められるようになり、その結果、水鳥の秋の渡り時期に湛水農地が出現するようになりました。調査の結果、湛水中の農地における水鳥の種数・個体数は、湛水後の農地の2~3倍、通常の非湛水農地の6~11倍高いことが判明しました。特に、シギ・チドリ類が、湛水農地を頻繁に利用していることが分かりました。
人間活動による湿地消失や渡り性水鳥の減少が問題となっている中で、水田が代替生息地として注目されていましたが、湛水時期や地域は限られていました。本研究は、水田以外の農地でも湛水によって渡り性水鳥の生息地として機能することを示し、より広域や他季節での応用が期待されます。
なお、本研究成果は、2025年1月28日(火)公開のAgriculture, Ecosystems & Environment誌に掲載されました。
論文名:Short-term flooding in non-rice croplands provides stopover habitats for migrating waterbirds(非水田での短期湛水が渡り中の水鳥の中継地を創出する)
URL:https://doi.org/10.1016/j.agee.2025.109504
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