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肥満のカギを握る腸内古細菌と糞便中グリココール酸濃度~腸内古細菌の枯渇と糞便中グリココール酸濃度の上昇が肥満と相関することを解明~(遺伝子病制御研究所 助教 山村凌大)

2025年3月10日

ポイント

●30種類の糞便成分及び腸内細菌そうと肥満度との関連を包括的に検討した研究。
●胆汁酸の一種であるグリココール酸の糞便中濃度が、肥満と有意な正の相関関係を示した。
●糞便中グリココール酸値が高い対象者では、古細菌のMethanobrevibacter属の検出なし。

概要

北海道大学遺伝子病制御研究所の山村凌大助教、同大学大学院医学研究院の玉腰暁子教授らの研究グループは、北海道寿都町に居住する一般住民を対象とする疫学研究を実施し、肥満度と関連する糞便成分や腸内細菌属を明らかにしました。

本研究では対象者をボディマス指数(BMI)に基づいて「低体重」「正常体重」「肥満」の3群に分類し、30種類の糞便成分と腸内細菌そうの組成を比較しました。

その結果、肥満群では糞便中のグリココール酸(GCA)濃度が低体重・正常体重群と比べて有意に高値を示すことが明らかになりました。また、糞便中GCA濃度を基に対象者を4群に分類したところ、GCA濃度の最も高い群では、GCA濃度の最も低い群と比較して肥満の有病率比が有意に高いことを発見しました。加えて、腸内細菌そうの解析では、GCA濃度の最も高い群で古細菌の一つであるMethanobrevibacter属が検出されないことを明らかにしました。

Methanobrevibacter属はGCAの脱抱合を担う酵素を持つことが示されており、本研究では実際にGCA濃度の最も高い群においてこの酵素をコードする細菌遺伝子の発現が低下していることが示されました。本研究は世界で初めて、肥満者における腸内古細菌の枯渇と糞便中GCA濃度の上昇を示し、腸内環境が肥満に及ぼす影響を明らかにしました。

なお、本研究成果は202538日(木)、The Journal of Nutritional Biochemistry誌にオンライン掲載されました。

論文名:Increased fecal glycocholic acid levels correlate with obesity in conjunction with the depletion of archaea: the DOSANCO Health Study(肥満に伴う糞便中グリココール酸濃度の上昇と腸内古細菌の枯渇)
URL:https://doi.org/10.1016/j.jnutbio.2025.109846

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本研究の概要図。肥満者では、低体重・正常体重の者と比較して糞便中のグリココール酸濃度が有意に高いことを発見した。加えて、肥満者では、低体重・正常体重の者で検出される胆汁酸代謝を司る古細菌の一つであるMethanobrevibacter属が検出されなかった。