2025年3月13日
ポイント
●モウコムカシヨモギ(キク科)は、国内では室蘭市で一度だけ分布記録のある推定外来種。
●本種の生育を、約半世紀ぶりに厚真町と石狩市の海岸付近で確認。
●厚真町では海岸を埋め尽くすように繁茂。今後、分布が拡大する可能性があり、注意が必要。
概要
北海道大学総合博物館の首藤光太郎助教、同ボランティアの道川富美子氏、同大学院地球環境科学研究院の露崎史朗教授、北海道野生植物研究所の五十嵐博氏らの研究グループは、北海道厚真町と石狩市で、国内で約半世紀ぶりにモウコムカシヨモギの生育を確認し、生育環境から外来種と推定されること、今後の分布拡大に注意が必要であることを報告しました。
モウコムカシヨモギは、国内では約50年前に一度だけ室蘭市で採集記録のある植物です。当時から外来種であることが推定されていましたが、本種の国内分布を指摘した海外の文献もあり、分布の実態が曖昧でした。2022~2023年に、露崎教授と道川氏は、厚真町と石狩市で、それぞれ見慣れない植物を発見しました。首藤助教がこの植物を検討し、本種と同定しました。
生育地はすべて海岸に近い人為的影響の大きい環境であり、本種はやはり外来種であるものと思われます。発見した産地の一つである厚真町の海岸では、膨大な個体数を持つ本種が、地面を埋め尽くすように繁茂していました。塩性湿地をはじめとした希少種が集中する湿地を主な生育環境とすることから、湿地生態系への影響が懸念されます。今後分布が拡大する可能性があり注意を要するため、本種を見かけた場合、速やかに以下お問い合わせ先までご相談ください。
なお、本研究成果は、2025年3月7日(金)発行のActa Phytotaxonomica et Geobotanicaの76巻1号(日本植物分類学会が刊行する学術誌)に掲載されました。
論文名:Re-collection of Potentially Introduced Symphyotrichum ciliatum (Ledeb.) G.L.Nesom (Astereae, Asteraceae) in Japan after Half a Century(半世紀ぶりに日本で再採集された潜在的外来種モウコムカシヨモギ [キク科シオン連])
URL:https://doi.org/10.18942/apg.202421
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