2025年3月27日
北海道大学
中京大学
ポイント
●動画広告における打消し表示への視線と記憶について検証。
●打消し表示を拡大したとしても、安定的な視線停留や記憶を保証しないことを解明。
●広告内容の適切な表示方法の取り組みや規制の進展に期待。
概要
北海道大学大学院文学研究院の河原純一郎教授、中京大学心理学部の伊藤資浩任期制講師は、動画広告内の「打消し表示」(例:『割引は会員限定』、『一部のコンテンツは課金対象』)は、文字サイズを拡大したとしても安定した視線停留や記憶を保証しないことを明らかにしました。
動画広告では、商品やサービスの訴求点(強調表示)とともに、その条件や補足を示す打消し表示が表示されることがあります。しかし、打消し表示は小さな文字で表示されることが多く、視認性が低いです。そのため、消費者に十分に認識されず、消費者が広告内容を誤認するケースがあります。
本研究では打消し表示の文字サイズを典型的な30ptから80ptに拡大し、視線の動きと記憶に及ぼす影響を調べました。その結果、ある広告では文字サイズ拡大により、打消し表示への視線停留が増えたものの、別の広告では増えませんでした。また、いずれの広告においても、文字サイズを拡大しても2/3以上の人が打消し表示の内容を思い出せませんでした。これらのことから、打消し表示の内容を適切に伝えるためには、文字サイズを大きくするだけでは不十分であることが示されました。
なお、本研究成果は、2025年3月10日(月)公開の『心理学研究』に掲載されました。
論文名:動画広告における打消し表示の文字サイズが視線停留と記憶に及ぼす影響
URL:https://doi.org/10.4992/jjpsy.96.24004
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動画広告における打消し表示の表示例(消費者庁ウェブサイトで公開されている2種類の動画広告を編集したもの)。青枠線内が打消し表示であり、枠線は実際には表示されない。