2025年4月10日
ポイント
●細胞表面分子Eva1欠損マウスの抗肥満・抗糖尿病効果を発見。
●肥満の内臓脂肪組織におけるマクロファージを介したEva1の働きを解明。
●内臓脂肪型肥満から生じる代謝疾患に効果的な新規治療法の開発に期待。
概要
北海道大学遺伝子病制御研究所の孫 ユリ講師、近藤 亨教授らの研究グループは、Epithelial V-like antigen 1(Eva1)と呼ばれる細胞表面分子が肥満に伴う内臓脂肪組織の機能不全に関与することを発見しました。
肥満人口の増加は世界的に問題となっていますが、肥満から生じる代謝異常症の成因・発症に関わるメカニズムについては不明な点が多く残されています。肥満の進行に伴う脂肪組織の肥大化、特に内臓脂肪が過剰に蓄積されると耐え切れなくなった脂肪細胞は死んでしまい、これを貪食するマクロファージなどの免疫細胞が脂肪組織に集まり、炎症を引き起こします。炎症の拡大は全身に悪影響を与え、メタボリックシンドロームをはじめとする様々な代謝疾患の原因になると考えられています。
今回、研究グループはEva1欠損マウスに高脂肪食を与えると、野生型マウスに比べて体重増加が抑えられ、内臓脂肪組織の炎症を引き起こさず、肥満や糖尿病を発症しないことを見出しました。
さらに、野生型マウス由来のマクロファージをEva1欠損マウスに移植すると、内臓脂肪組織の炎症と肥満症が誘導されることから、マクロファージを介したEva1の働きが肥満発症に関与することを明らかにしました。
今回の研究成果から、Eva1の働きを抑制することが、肥満やメタボリックシンドロームの新たな治療戦略の開発につながると期待されます。
なお、本研究成果は、2025年3月19日(水)公開のMetabolism-Clinical and Experimental誌にオンライン掲載されました。
論文名:Eva1 deficiency prevents obesity-induced metabolic disorders by reducing visceral adipose dysfunction(Eva1欠損は内臓脂肪機能障害を抑制し、肥満による代謝障害を防ぐ)
URL:https://doi.org/10.1016/j.metabol.2025.156235
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