新着情報

ホーム > プレスリリース(研究発表) > 西部北太平洋の植物プランクトン群集組成を制御する栄養物質供給機構の解明~北太平洋中層水から供給される鉄とケイ素の重要性~(低温科学研究所 教授 西岡 純)

西部北太平洋の植物プランクトン群集組成を制御する栄養物質供給機構の解明~北太平洋中層水から供給される鉄とケイ素の重要性~(低温科学研究所 教授 西岡 純)

2025年4月10日

北海道大学
東京大学

ポイント

●北太平洋の中層水から表層に湧き上がる栄養物質の供給量を観測から見積もることに成功。
●中層水から供給される栄養物質量とその化学量論比が、表層の珪藻類の増殖を制御することを発見。
●気候変動による海洋の変化に対する海洋炭素循環や生態系の変化の予測に貢献。

概要

北海道大学低温科学研究所附属環オホーツク観測研究センターの西岡 純教授、同大学大学院地球環境科学研究院の鈴木光次教授、東京大学大気海洋研究所の小川浩史教授、安田一郎教授(研究当時)らの研究グループは、北太平洋の中層水から供給される鉄(Fe)やケイ素(Si)、窒素(N)などの栄養物質量とその化学量論比が、表層の植物プランクトン群集組成を制御することを明らかにしました。

これまで、オホーツク海やベーリング海などの北方圏縁辺海から北太平洋に繋がる中層の循環によって植物プランクトンの増殖に欠かせないFeSiNなどの栄養物質が移送され、北太平洋の生物生産を高めていることが分かっていました。しかしこれらの栄養物質が、どこで、どのような物理的メカニズムを経て北太平洋中層から表層に供給されて、この海域の海の恵みをもたらす珪藻類の増殖を制御しているのかは分かっていませんでした。

本研究では、これまでに集めてきた北太平洋の栄養物質の化学的データセットと、同時に観測した乱流混合のパラメータの観測データを、表層の植物プランクトン群集組成の情報とともに解析しました。その結果、北太平洋の亜寒帯循環域と親潮―黒潮移行域において中層水から表層に供給されるFeSi量やその化学量論比によって、珪藻類の現存量が制御されていることが示されました。

本研究で見えてきた北太平洋の珪藻類の増殖を制御する機構は、我が国の水産資源の維持機構や地球規模の炭素循環プロセスの理解を大きく進めます。また、現在起こりつつある水温上昇や、黒潮や親潮勢力の強化・弱化などの気候変動に起因する海の変化に対して、海洋生態系や炭素循環がどのように応答するかを理解する上で欠かせない知見となります。

本研究成果は、2025319日(水)公開のBiogeosciences誌にオンライン掲載されました。

論文名:Phytoplankton community structure in relation to iron and macronutrient fluxes from subsurface waters in the western North Pacific during summer(西部北太平洋における表層下から供給される鉄や栄養塩フラックスと植物プランクトン群集組成の関係)
URLhttps://doi.org/10.5194/bg-22-1495-2025

詳細はこちら