2025年4月16日
北海道大学
東邦大学
札幌医科大学
旭川医科大学
大阪公立大学
ポイント
●細菌の適応進化を短期間で観察することが可能。
●進化の過程で出現した遺伝子変異から実際の適応進化に関与した遺伝変異を同定可能。
●細菌進化(病原性や薬剤耐性化など)の遺伝子レベルでの解明や将来的なリスク評価に有用。
概要
札幌医科大学大学院医学研究科博士課程の上村幸二郎氏、同大学医学部の山本 聡講師、小笠原徳子准教授、髙橋 聡教授、千葉弘文教授、横田伸一教授、東邦大学医学部の青木弘太郎助教、大阪公立大学大学院生活科学研究科の和田崇之教授、北海道大学大学院獣医学研究院/同One Healthリサーチセンターの佐藤豊孝准教授らの研究グループは、細菌を短期間(20日以内)で急速に適応進化させ、進化の過程で出現した数多くの遺伝子変異の中から、病原性や薬剤耐性に関与する遺伝子変異を網羅的に抽出・推定する手法「RIBEA(Rapid and Integrated Bacterial Evolution Analysis:リベア)」を開発しました。
細菌感染症において、細菌の病原性や薬剤耐性化の様式の理解やそのメカニズムを遺伝子レベルで解明することはとても重要です。一方で、細菌の進化を観察するには長期間の実験が求められます。現在、臨床現場で問題となっている細菌の解析は比較的容易ですが、病原性や薬剤耐性の獲得機構が未知の場合、これらの細菌のどのような細菌因子や遺伝子変異が病原性や薬剤耐性の発達に実際に関与しているかを網羅的に調べることは不可能でした。
本研究では、呼吸器感染症や血流感染症において臨床上問題となる細菌の一種である肺炎桿菌を用いてRIBEAを開発しその有効性を証明しました。
この手法は今後、医療現場でリスクの高い菌を素早く見つけ、治療や対策に活かすための強力なツールになることや、細菌学において細菌の適応進化様式の解明に繋がると期待されます。
なお、本研究成果は2025年3月25日(火)に国際科学誌「Nature Communications」に掲載されました。
論文名:Rapid and Integrated Bacterial Evolution Analysis unveils gene mutations and clinical risk of Klebsiella pneumoniae(迅速かつ統合的な細菌進化解析による、肺炎桿菌の遺伝子変異と臨床リスクの解明)
URL:https://doi.org/10.1038/s41467-025-58049-1
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RIBEAの概要図
上記の細菌学的手法により細菌の適応進化を迅速に観察し、細菌の適応に関連した遺伝子変異を網羅的に抽出・推定することが可能となった。