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コロナウイルス感染を抑える香辛料由来天然化合物を発見~変異株にも有効な抗ウイルス薬の開発に期待~(先端生命科学研究院 教授 門出健次)

2025年4月21日

ポイント

●香辛料ナツメグなどに含まれるマラバリコーンCがSARS-CoV-2の感染を抑制することを発見。
●変異株に対しても感染抑制効果を示し、今後、現れる可能性のある変異株にも有効であると期待。
●マラバリコーンCは脂質ラフトに影響を与えることで感染を抑制することを発見。

概要

北海道大学大学院先端生命科学研究院の門出健次教授、同大学大学院農学研究院の村井勇太准教授、同大学人獣共通感染症国際共同研究所の佐藤彰彦客員教授(兼 塩野義製薬株式会社主席研究員)、同大学総合イノベーション創発機構ワクチン研究開発拠点の澤 洋文教授らの研究グループは、香辛料などに含まれるマラバリコーンCSARS-CoV-2(コロナウイルス)に対して抗ウイルス活性を有することを発見しました。

現在、新型コロナウイルスの抗ウイルス薬は複数あり、それぞれの作用機序や対象が異なります。また抗ウイルス薬によっては使用や併用禁忌もあり、安全性への配慮が必要となります。そこで研究グループは、安全な新しい治療薬候補の開発を目的として、研究グループが保有する天然化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを実施し、抗ウイルス活性を有する天然有機化合物の同定を試みました。その結果、香辛料のナツメグなどに含まれるマラバリコーンCSARS-CoV-2に対して強い抗ウイルス活性を有することを確認しました。また、本化合物はアルファ、ガンマ、及びデルタ株といった変異株に対しても抗ウイルス活性を示すことを確認しました。

さらに、研究グループは、本化合物の抗ウイルス作用メカニズムを解析するために、ウイルス感染細胞が正常細胞に融合(感染)する過程を可視化する評価法の確立にも成功しました。この評価系を用いることにより、本化合物はSARS-CoV-2感染細胞による膜融合を阻害しており、より詳細な膜融合阻害メカニズムを調査したところ、細胞膜上の脂質ラフトと呼ばれる領域の秩序に影響を与えることで感染を抑制していることが新たに示唆されました。

本研究では、食品に含まれる天然有機化合物によるSARS-CoV-2抗ウイルス活性を発見し、この成果によってヒトに安全な新規治療薬の開発が進むことが期待されます。

なお、本研究成果は、2025312日(水)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。

論文名:Malabaricone C isolated from edible plants as a potential inhibitor of SARS-CoV-2 infection(食用植物から単離されるマラバリコーンCによるSARS-CoV-2感染抑制)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-024-83633-8

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