2025年5月7日
北海道大学
旭化成ファーマ株式会社
ポイント
●カニクイザル神経障害性疼痛モデルの脳波と疼痛症状の関連を発見。
●神経障害性疼痛の病態の一端として、コレステロールの輸送・代謝の変化が関与する可能性を報告。
●よりヒトに近い疾患モデルとして、新たな治療薬開発への貢献に期待。
概要
北海道大学大学院歯学研究院の飯村忠浩教授らと、旭化成ファーマ株式会社の共同研究グループは、カニクイザル神経障害性疼痛モデルの評価法構築に成功しました。
神経障害性疼痛は感覚を司る神経の障害によって引き起こされる疼痛で、しばしば慢性化することにより、患者さんの生活の質(QOL)を大きく低下させることにつながります。医療現場ではより効果の高い新規鎮痛剤の創出が望まれていますが、これまで神経障害性疼痛に対する新薬の研究開発は成功率が低く、新薬開発が難しい疾患とされてきました。その一因として、神経障害性疼痛の創薬研究では、実際の患者さんでの薬効を動物実験で予測することが難しいことが知られており、より患者さんの痛みに近い現象を動物モデルで評価できる手法の開発が課題の一つとなっていました。
今回、研究グループは、カニクイザル神経障害性疼痛モデルの症状を行動学的解析や脳波解析によって評価する手法を開発しました。その結果、このモデルでは、行動解析によってヒトの疼痛に似た自発痛の症状が認められ、その症状が脳波のθ波成分のパワーと有意に相関することが分かりました。また、このモデルでは過去に実際の神経障害性疼痛患者さんで報告されているのと同様の遺伝子発現変動も認められ、よりヒトの神経障害性疼痛に近いモデルとなっている可能性が示唆されました。また、本研究では同モデルの神経組織でコレステロールの輸送・代謝に関わる遺伝子の発現が変化していることが分かりました。
本研究のさらなる発展が、今後神経障害性疼痛に対する新たな治療薬開発に繋がることが期待されます。
なお、本研究成果は、2025年4月3日(木)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。
論文名:Cholesterol metabolism and neuroinflammatory changes in a non-human primate spinal nerve ligation model(霊長類脊髄神経結紮モデルにおけるコレステロール代謝及び神経炎症機構の変化)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-025-96160-x
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