2025年5月26日
北海道大学
熊本大学
株式会社RAINBOW
ポイント
●廃棄するフィルターに残存する血小板と血漿成分を回収加工し高品質f-hPLの製造法を確立。
●作製されたf-hPLは市販FBSの4倍、商用hPLとは同等以上のMSC増殖能を発揮。
●日本が世界をリードしている再生医療領域における本製剤の応用を期待。
概要
北海道大学大学院医学研究院の藤村 幹教授らの研究チーム、株式会社RAINBOW(本社:札幌市)、及び日本赤十字社北海道ブロック血液センターは、間葉系幹細胞(MSC)の増殖に有効な培養サプリメントとして、廃棄予定の白血球除去フィルターから回収した血小板と血漿を用いたヒト血小板溶解物(以下、f-hPL)の製造に成功し、その有効性を実証しました。
再生医療や細胞治療の実用化には、細胞の大量増殖が不可欠となっています。これまでの細胞培養ではウシ胎児血清(FBS)が一般的に使用されていましたが、免疫反応や倫理的懸念、動物由来感染症のリスクなどの課題がありました。f-hPLはこれに代わる有望な選択肢ですが、ヒト由来の原料確保が難しく、臨床用に十分な量を確保することが難しいとされてきました。
そこで研究グループは、血液製剤の製造過程で用いられる白血球除去フィルターに着目し、フィルターに残存する血小板と血漿成分を回収・加工することで、有効性・安全性の高いf-hPLの製造法を確立しました。これにより、一つのフィルターから3.5×1010個の血小板を回収可能(平均回収率37.1%)となったほか、最適なタンパク濃度(27mg/mL)で作製されたf-hPLは、市販FBSの4倍、商用hPLとは同等以上のMSC増殖能を発揮することも明らかになりました。MSCはISCTの基準を満たす表面マーカーを発現し、三系統(脂肪・骨・軟骨)への分化能も保持しています。
また、自動細胞培養装置(Quantum)による臨床スケールでの大量培養にも成功し、90%以上の細胞生存率を実現しました。
今後は、GMP準拠の製造プロセス開発と各種臨床研究への展開に向け、学術機関や企業との連携を強化していく予定です。
なお、本研究成果は、2025年4月23日(水)公開の、Stem Cell Research & Therapy(Springer Nature)にオンライン掲載されました。
論文名:Human platelet lysate produced from leukoreduction filter contents enables sufficient MSC growth(白血球除去フィルター由来の血小板融解物は幹細胞増殖に有益な材料となる)
URL:https://doi.org/10.1186/s13287-025-04329-y
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