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T細胞内の分子を標的とした新たなペプチド阻害剤を開発~自己免疫疾患の新たな治療薬開発への応用に期待~(薬学研究院 特任教授 松田 正)

2025年5月1日

北海道大学
北海道科学大学

ポイント

●免疫応答を担うT細胞内のSTAP-1と呼ばれるタンパク質を標的とする新規阻害剤の開発。
●本阻害剤によるT細胞活性化と自己免疫疾患の増悪化抑制。
●新たな自己免疫疾患の新規治療薬開発に期待。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の佐々木悠斗研究員、松田 正特任教授及び北海道科学大学の柏倉淳一教授らの研究グループは、アダプター分子であるSTAP-1を標的とした新たなT細胞阻害剤を開発し、本阻害剤が自己免疫疾患の病態を抑制する作用があることを見出しました。

通常、私たちの体内に病原体が侵入した場合、免疫担当細胞が担う生体防御反応により排除されます。これにはT細胞が主要な役割を果たしており、T細胞の機能はT細胞受容体(TCR、T cell receptor)下流の信号伝達機構により厳密に制御されています。何らかの原因による異常なT細胞活性化は自己免疫疾患の発症や重症化の原因であることから、TCRを介した信号伝達機構の解明及び制御は免疫疾患の制御に重要です。これまで、本研究グループはその信号伝達にはSTAP-1が重要な役割を果たすこと、特にSTAP-1がT細胞内のリン酸化酵素であるLCKと直接結合してその働きを強めることにより、T細胞活性化を促進することを見出しています。

今回の研究ではSTAP-1/LCKの結合阻害ペプチドを作成・利用することにより、T細胞の機能が抑制され、自己免疫疾患の病態が軽減されることが明らかとなりました。本阻害ペプチドをさらに最適化し臨床への応用を進めることで、自己免疫疾患の新たな治療薬の開発が期待できます。

なお、本研究成果は、4月27日(日)公開のImmunoHorizons誌にオンライン掲載されました。

論文名:STAP-1-Derived Peptide Suppresses TCR-Mediated T Cell Activation and Ameliorates Immune Diseases by Inhibiting STAP-1-LCK Binding (STAP-1由来のペプチドはSTAP-1-LCK結合を阻害することでTCR誘導性T細胞活性化と免疫疾患を抑制する)
URL:https://doi.org/10.1093/immhor/vlaf015

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本研究による新たな自己免疫疾患治療戦略