2025年6月16日
ポイント
●ドローンを用いて氷縁域における細かな氷盤の大きさや形状分布の観測に成功。
●氷縁域の氷盤分布には自己相似性の特徴があることや融解過程の仕組みを解明。
●季節海氷域の融解過程の理解と定量化を通して気候変動の予測への応用に期待。
概要
北海道大学低温科学研究所の豊田威信助教、西岡 純教授、東京大学大学院新領域創成科学研究科の早稲田卓爾教授、国立極地研究所の伊藤優人研究員らの研究グループは、オホーツク海南部海氷域氷縁域の氷盤分布の特徴を明らかにして氷縁域における融解過程の仕組みを解明しました。
現在、オホーツク海を含む世界の海氷域は減少傾向にあります。気候変動予測を行うためには、気候モデルの中で海氷融解を正しく再現する必要があるのですが、海氷の融解過程は未だに十分理解されておらず、最新の気候モデルでも融解期の海氷域の再現性は低い状況にありました。
オホーツク海のような季節海氷域の後退を制御するのは氷縁域の融解速度です。氷縁域には波によって破砕された氷盤が数多く存在し、これらの氷盤が春先の日射により温められた氷盤間の海水から熱を効率よく吸収して一気に消失します。同じ海氷面積に対して氷盤が小さいほど海水に接する面積が大きいため、氷縁域の融解過程を理解するうえで氷盤の大きさや形状の実態把握が鍵となります。
本研究では、ドローンを用いてオホーツク海南部氷縁域の氷盤の統計的な性質を調べることにより、大きさ約1m以上の氷盤には自己相似性の特性があること、それ以下の氷盤は熱力学的な破砕効果が融解を促進する様子などの実態を明らかにしました。これらの結果は汎用性があり、数値モデル化することにより融解期の季節海氷域の変動予測の改善に貢献することが期待されます。
なお、本研究成果は、2025年5月31日(土)公開のPolar Science誌にオンライン掲載されました。
論文名:Melting processes of the marginal ice zone inferred from floe size distributions measured with a drone in the southern Sea of Okhotsk(オホーツク海南部のドローン観測により得られた氷盤サイズ分布から推測される氷縁域の融解過程)
URL:https://doi.org/10.1016/j.polar.2025.101215
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