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両親ゲノムの量比が異なる種間雑種の同時作出法を開発~一つの種子から二倍性雑種と異質三倍体の植物を再生させる新たな育種法を提案~(北方生物圏フィールド科学センター 教授 星野洋一郎)

2025年6月23日

北海道大学
千葉大学

ポイント

●二倍体同士の種間交配に由来する胚乳を用いた異質三倍体の作出に成功。
●同一種子内の胚と胚乳を用いることで両親ゲノム比の異なる二倍体と三倍体の同時作出が可能に。
●両親ゲノムを異なる量比で有する植物の作出を効率化する新たな育種法を開発。

概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの中野有紗特任助教と星野洋一郎教授、千葉大学環境健康フィールド科学センターの三位正洋名誉教授の研究グループは、異なる種間の交配に由来する種子から取り出した胚乳と胚をそれぞれ培養することで、二倍体の植物から異質三倍体と二倍体の種間雑種を同時作出する育種法を開発しました。

種間交雑育種と倍数性育種は、異なる植物種がもつ形質の導入や倍数化による果実等のサイズが大きくなることが期待され、多くの作物の育種に広く用いられています。当研究グループは、これまでに植物の胚乳が重複受精によって形成される三倍性組織である点に着目し、胚乳から植物体再生を行う胚乳培養系を開発してきました。本研究では、胚乳が両親のゲノムを有する点に着目し、ヒガンバナ科ハエマンサス属植物Haemanthus pauculifolius(パウクリフォリウス)及びH. albiflos(マユハケオモト)を用いた種間交配を行い、得られた種子内の胚乳と胚からそれぞれ植物体を再生し、得られた植物体において雑種性と倍数性の解析を行いました。

解析の結果、得られた胚乳由来個体は、母親と父親の染色体を21で有する異質三倍体であることが分かりました。さらに、それぞれの細胞質ゲノムを調査したところ、ともに母性遺伝していることが示されました。本手法は二倍体同士の1回の交配で両親のゲノム量比の異なる二倍体と三倍体を同時に作出可能であり、新たな育種法としての利用が期待されます。

なお、本研究成果は、202526日(木)公開のBMC Plant Biology誌にオンライン掲載されました。

論文名:Endosperm culture-based allotriploid hybrid production from an interspecific cross of Haemanthus spp.: new insights into polyploidization and hybridization(ハエマンサス種間交配由来の胚乳培養による異質三倍体作出:倍数化及び雑種作出に関する新たな知見)
URL:https://doi.org/10.1186/s12870-025-06181-x

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ハエマンサス属植物における種間交配に由来する胚乳と胚を用いた異質三倍体と種間雑種の同時作出