2025年8月8日
ポイント
●2023年の函館市臼尻町産及び小安町産の紅藻"ダルス"から、MAAsを調製。
●臼尻町産のダルスにMAAsが多く含まれることが判明。
●両地点の環境要因から、紫外線量がMAAs含有量に影響を与える可能性を示唆。
概要
北海道大学大学院水産科学研究院の岸村栄毅教授と熊谷祐也准教授らの研究グループは、2023年1~5月に函館市臼尻町及び小安町から採れたダルス(Devaleraea inkyuleeiinkyuleei)の紫外線防御物質マイコスポリン様アミノ酸(MAAs)含有量について月別変動を調査しました。
本研究で調査した2023年の臼尻町産ダルスのMAAs含有量は、過去の結果と同様に2月から3月にかけて最大となり、特に2月の試料で最も高い値を示しました。また、2023年の小安町産ダルスのMAAs含有量は、1月から4月にかけて徐々に増えていき、4月の試料で最も高い値を示しました。しかし、小安町産ダルスの最大値は臼尻町産の最も少ない5月の試料と同程度でした。臼尻町産のダルスは、海面近くで紫外線量が多い、コンブの養殖ロープから採取しました。一方、小安町産のダルスは、水深5メートルほどの紫外線量が少ない地点から採集しました。このことから、ダルスは紫外線量に応じてMAAsの生成量を調節していることが示されました。
本研究成果は低利用資源であるダルスを養殖や畜養などによりMAAs含有量を増やして高付加価化することが可能なことを示唆しており、環境に優しい天然の紫外線防御物質MAAsの産業利用の推進が期待されます。
なお、本研究成果は、2025年6月27日(金)公開のFisheries Science誌にオンライン掲載されました。
論文名:Mycosporine-like amino acids from red alga Devaleraea inkyuleei harvested at two locations in southern Hokkaido(北海道南の2地点で採取された紅藻ダルス由来のマイコスポリン様アミノ酸)
URL:https://doi.org/10.1007/s12562-025-01901-6
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試料として用いた2地点のダルスの違い
臼尻町産のダルスは、海面近くで紫外線量が多い、コンブの養殖ロープから採取した。一方、小安町産のダルスは、水深5メートルほどの紫外線量が少ない地点から採集した。このことから、ダルスは紫外線量に応じてMAAsの生成量を調節していることが示された。