2025年8月26日
ポイント
●ベトナム中部において広域的な地質調査により高度変成岩を発見。
●地温勾配の降下を示す反時計回りの変成経路を持つ変成岩をベトナムで初めて報告。
●ベトナムの地史解明のみならず特異な物質循環をもたらしたテクトニクス像の描写に貢献。
概要
北海道大学総合博物館のブイティシンブオン資料部研究員及び北野一平助教らの研究グループは、ベトナム中部に分布するア・ブオン層において広域的な地質調査を行い、高度変成岩の局所的な産出を見出しました。予察的な岩石学的解析を経て、ベトナムでこれまで報告例のない地温勾配の降下(反時計回りの変成経路)を示す特異な変成岩であることを明らかにしました。
ベトナムの変成岩は主に古生代後期の大陸衝突により形成され、共通して断層帯または剪断帯に沿って分布し、当時の地温勾配上昇(時計回りの変成経路)を記録しています。ベトナム中部には、ダイ・ロック岩体という古生代前期のマグマ活動で形成した花崗岩体に伴い高温の熱変成を受けた高度変成岩が剪断帯沿いに産していますが、それらがいつどのような地殻変動(テクトニクス)で生じたのかは議論が続いています。そこで、研究グループは、ダイ・ロック岩体の周囲にあるア・ブオン層に着目して、広域的な地質調査を行いました。その結果、従来、弱く変成した堆積岩とみなされていたア・ブオン層から、低度~高度変成岩が産することが判明しました。高度変成岩の形成温度圧力(変成)条件を推定すると、ダイ・ロック岩体の高度変成岩上昇時の条件と一致し、両者の成因的関連性が明確になりました。さらに、ア・ブオン層の変成岩は反時計回りの変成経路を有し、ベトナムでは報告例のない地温勾配の降下を記録した特異な形成過程を持つことが見出されました。今後、詳細な岩石学的・年代学的解析を行い具体的なテクトニクス像を明らかにします。
なお、本研究成果は、2025年8月13日(水)公開のVietnam Journal of Earth Sciences誌にオンライン掲載されました。
論文名:Metamorphism in the A Vuong Formation, southern Truong Son Belt, Vietnam(ベトナムチョン・ソン帯南部ア・ブオン層の変成作用)
URL:https://doi.org/10.15625/2615-9783/23301
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(左)ア・ブオン層から発見された高度変成岩の野外での産状
(右)高度変成岩に含まれるアルミノケイ酸塩鉱物3種(紅柱石・珪線石・藍晶石)の顕微鏡写真